2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610356
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯島 康夫 新潟大学, 人文学部, 助教授 (20313489)
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Keywords | 水利慣行 / 村落 |
Research Abstract |
1.渇水期に、同一用水路を利用する下流村落が、上流の堰を破却し、上流村落によるその堰の修復までの間に流下した水を引くことができるオタハライという水利慣行について、群馬県高崎市の旧38か町村の水田を灌概する長野堰用水系において、その存在の有無を現地調査した。その結果、19の用水支線のうち、上小塙堰、浜尻堰、貝沢堰、新井堰、一貫堀(五具堰)において、当該慣行の存在が確認された。関係村落は、破却される堰を持っ上流村落、破却する下流村落を含めて上小塙、上並榎、筑縄、下小鳥、浜尻、貝沢、和田多中、飯塚、下佐野、南大類、中大類、宿大類、下大類、綿貫、柴崎、栗崎、旧高崎駅の17地区におよび、来年度以降の調査によってさらに増えていくことが予想される。 2.長野堰土地改良区は、長野堰本流に設置された本堰と呼ばれる水門(かっ七のオタ)を管理し、それ以外の用水支線のオタおよびそこからの引水については、各水掛かり地区に委ねられている。長野堰本流においては渇水期に、水掛かり地域を上流・中流・下流あるいは上流・下流に分けて時間分水である番水を行う「下げ水」=「皆払い」という慣行が行われていることを確認した。「下げ水」は完全な時間分水であるので、オタハライとはやや形態が異なるが、下流への用水の融通という点で共通性があり、オタハライと併せて長野堰用水系における渇水期の慣行システムとして調査研究対象とする必要がある。 3.高崎市史編纂委員会によって紹介された一貫堀用水系中大類地区の近世嘉永期の文書について、その内容を調査し、五具堰のオタハライ(当該地区ではトメハライ)慣行形成過程に関わる重要な史料であることを確認した。
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