2002 Fiscal Year Annual Research Report
九州山地五木谷における堂を中心とした村落自治の伝統に関する民俗学的調査研究
Project/Area Number |
13610359
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
湯川 洋司 山口大学, 人文学部, 教授 (10166853)
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Keywords | 堂 / 堂祭祀 / 村落自治 / 村落移転 / 水没移転村落 / 川辺川ダム |
Research Abstract |
1.調査の実績 (1)五木村の堂の現状調査 ・川辺川ダムによる水没予定地域内のうち、未調査の堂(金川)の実態調査。 ・川辺川ダムによる水没予定地域外のうち、下記地区の堂の実態調査。 ・宮目木、葛の八重、竹の川、白水、吐合、梶原、宮園、西谷、八重。 (2)五木村の堂関連記録資料調査(上記調査と併行実施) ・五木村教育委員会所蔵「文化財調査台帳」ほか。 ・五木村板木佐藤正忠氏所蔵資料「先祖附け」ほか。 ・五木村野々脇森口好勝氏所蔵資料「野々脇堂まつり案内」ほか。 (3)ダム建設に伴う村落・堂移転の参考事例調査 ・神奈川県足柄上郡山北町所在の三保ダム(丹沢湖)建設に伴う、同町世附の念仏道場の移転、及び世附百万遍念仏継承に関する経緯と現状について。 2.文献購入 全国的な堂祭祀事例の抽出に活用。 3.調査研究結果の所見 (1)非水没地域における堂の祭祀実態は、水没地域に比して旧状を保っている。 (2)非水没地域では過疎化に伴い堂祭祀の維持が困難になる傾向があるが、寄合いなどに堂が活用されている場合は、子供の数も多く村落生活に活気と秩序が保たれている(特に平野地区)。 (3)三保ダムの事例から、伝統行事の維持・存続が村落住民の結束・親交等に有効であることが確認できた。 (4)以上から、村落自治の確保のうえで、堂などの住民が結集できる「公的」な施設を存置することは重要な意義を持つと言える。今後は、それらの維持存続に関する具体的方策の検討が必要になる。 4.来年度の調査研究の計画 (1)五木村に所在する堂の記録化を終える。 (2)収集した文献資料の内容の整理を終える。 (3)調査研究結果を報告書にまとめる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 湯川洋司: "堂(「五木民俗記」8)"毎日新聞(西部本社)夕刊. 2002.4.26号. 9 (2002)
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[Publications] 湯川洋司: "堂の行方(「五木民俗記」8)"毎日新聞(西部本社)夕刊. 2002.5.10号. 7 (2002)
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[Publications] 湯川洋司: "自治の原点(「五木民俗記」9)"毎日新聞(西部本社)夕刊. 2002.5.17号. 7 (2002)
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[Publications] 湯川洋司: "仕事"新谷尚紀, 波平恵美子, 湯川洋司編著『暮らしの中の民俗学 3 一生』(吉川弘文館発行). 44-67 (2003)