2002 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュ砒素汚染村における生産・消費・行動の相互関係に関する研究
Project/Area Number |
13610360
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Research Institution | Kyshu Institute of Design |
Principal Investigator |
谷 正和 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 助教授 (60281549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正史 北陸学院短期大学, 教授 (50225538)
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Keywords | バングラデシュ / 地下水砒素汚染 / 農業生産 / 文化人類学 / 代替水源 / 社会的障壁 |
Research Abstract |
本年度行った研究活動は農業センサスの分析と代替水源の利用にかかわる社会的障壁の分析である。 農業センサスは砒素汚染よる被害の深刻な一村落全世帯を対象に行った。前回の科研研究では、砒素被害が経済的に弱い世帯でより深刻であるが、生活資源の脆弱性の故、このような世帯では有効に砒素汚染に対処することができないということが明らかになった。今回の研究では、村全体の余剰適応力を評価するため、農業生産に関する体系的なデータを収集した。データ分析では、村落を人間活動を含む文化生態系として捉え、その生態系内の生産と消費を解析することにより、砒素汚染という環境ストレスに対する生態基盤としての村落の適応力を評価した。その結果、主要食料源である米の需給関係から見ると、生態系としての村は、余剰生産力があり、その余剰資源を環境ストレスに対応するため投資する可能性があることがわかった。 また、代替水源利用については、砒素を含まない安全な水を供給するために建設された改良型掘り抜き井戸や深井戸の利用状況を調査し、このような集団利用型代替水源の飲料水供給の効果とその問題点を分析した。それによると、集団型代替水源は建設個所が比較的少数で集落をカバーできるため、建設コストの費用対効果は高い。しかし、女性の徒歩による水汲みに限られるため、距離的な限界だけでなく、女性の社会的行動制限にも影響を受ける。また、代替水源は「中央」に立地しがちで、周縁部に居住する社会的弱者には使用しにくいものとなる。代替水源への距離が近くても、村内集団の関係から、利用しない・できない世帯も発生する。これらのことから、効果的な代替水源の立地には、目に見えない社会的、文化的要因を理解することが不可欠であり、様々な要因で利用できない世帯に安全な水を供給するためには、集団型だけでなく、個別世帯方の代替水源の開発も必要であることが明らかになった。(795字)
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Research Products
(1 results)