2001 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における歴史学の制度化と歴史学部の不在に関する研究
Project/Area Number |
13610384
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
小路田 泰直 奈良女子大学, 文学部, 教授 (30186671)
|
Keywords | 歴史学部 / ランケ / リース / 帝国大学 / 森有礼 |
Research Abstract |
本年は、世界各国の大学には必ずといっていいほど存在している歴史学部がなぜこの日本には存在しないのかを確かめるために、主として次の二つのことを調査した。 (1)ヨーロッパ、とりわけイギリスにおける歴史学部形成の背景。 (2)1886年の帝国大学設置の時、一方でランケ史学の流れを汲む歴史家リースの招聘に熱心になっておきながら、なぜ明治政府は歴史学部(当時の呼び名だと歴史科大学)の設置に踏み切らなかったのか、その背景。 そして一つの結論と一つの仮設を得た。 結論の法は、19世紀の後半において、高等教育機関にあえて歴史学部を設けるということは、人間および社会認識の科学化-それを人文科学・社会科学-をはかり、各国ともに科学立国体制を作り上げるのに不可欠のことであったということであり、仮設の方は、明治政府も、帝国大学設置の当初は、歴史学部設置の意図をもっていたが、その推進者である森有礼文部大臣の死(1889年2月11日)を境に、急速にその意図を失っていったという仮設である。ランケ史学登場以降の歴史学は、自然科学における実験と同じ役割を果たす学問として、その役割が期待された学であったが、森の死以降、日本の科学技術政策は、独創的研究追求型の科学技術制作から輸入=翻訳型の科学技術政策に大きく方向転換をしたので、あえて歴史学を振興する必要がなくなったことが、それに大きく作用した。 とりあえずは以上の仮設を見出したことが、本年度の成果であった。なおその成果は2002年1月25・26日に東京大学で開催された国際シンポジウム「歴史学と史料研究」において、公表した。
|