2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世後期における顕密仏教勢力の「民衆」化と律衆の社会的活動
Project/Area Number |
13610389
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
大石 雅章 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (50152046)
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Keywords | 顕密寺社 / 聖 / 遁世僧 / 律衆 / 西大寺 / 戒律興隆 |
Research Abstract |
鎌倉時代に仏教興隆の担い手として登場する律衆について、彼らが顕密寺社勢力の中から誕生した点を踏まえ、その歴史的特質を顕密寺社勢力との関わりの中で検討し、顕密寺社勢力の「民衆」化の視点から考察するが本研究の課題である。律衆が寺院に所属する寺僧としての身分を離脱した遁世僧(聖)であることから、律衆を中世顕密寺社と遁世僧(聖)との歴史的な展開の中で考えることが重要であり、そのような視点から顕密寺社勢力と聖の関係を中心に研究をすすめ論文にした。その時代区分を限るとするならば、大きく3段階に区分できた。 第1段階、聖の登場と寺院勢力の形成…平安期 顕密寺院から離脱した聖の活動が顕著となり、各地に別所が形成されるが、その別所の多くが顕密寺社の末寺となり顕密寺社を支える裾野として組織される。 第2段階、顕密の中核寺院への進出と戒律興隆…平安末期から鎌倉初期 別所が中央の顕密寺院内に形成され、勧進による寺院修造に携わる聖(遁世僧)は寺院経営にとってなくてはならない存在となる。遁世僧は戒律を機軸とした仏教興隆の担い手であり、顕密仏教の活性化に貢献する。 第3段階、国家的祈祷寺院の運営権を掌握する律衆…鎌倉時代 戒律を重視した仏教興隆活動と民衆の教化活動が一層切り結ばれ、律衆自身が西大寺・大安寺などの国家的寺院の運営権を掌握する。 以上、顕密寺院勢力の「民衆」化の一つとして聖を考え、その過程の中で律衆を考察した。
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Research Products
(2 results)