2001 Fiscal Year Annual Research Report
民俗神や民族神との関係分析を通した近世武家権力神の基礎的研究
Project/Area Number |
13610390
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高野 信治 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教授 (90179466)
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Keywords | 怨霊 / 民俗神化 / 対外的危機意識 / 産土神化 / 武士像 |
Research Abstract |
本年度は権力神(神格化された武家領主に関わる人物)や関連するデータの収拾を可能な限り実施したが(現在700事例余り収集)、創祀時期や性格をめぐり、分類が可能と思われる。この点は継続調査が必要であるが、現段階で特徴的なケースは以下の通りである。 1,近世以前の武士が神格化されるケースである。いわゆる曾我兄弟、源義家、鎌倉権五郎景政など全国的にみられるもの、また個別大名家の先祖が神格化されたものなどがあるが、延岡藩領北部の佐伯惟治(大友氏に討たれた旧臣)祭神のように、怨霊化を畏怖した慰霊信仰は、民俗神化しているとも考えられ注目される。このように豊国大明神(豊臣秀吉)や東照宮(徳川家康)以前の武士の人神の存在は今後事例収集とその解析が必要であろう。 2,近世中期以降における海防意識高揚のなか、武家権力神が創祠されるケースである。寛政期対馬藩宗家による文永の役で戦死した宗助国の祭祀、安政年間函館での東照宮創祠などは典型である。民族神が対外的危機意識のなかでクローズアップされるのとは違う(あるいはその前段階の)回路が存在したことが窺える。 3,明治になって祭祀される(旧)藩主層などのケースである。これは当初の予想を遥かに超えていた。全国的に多くの地域で検出できるが、このようなケースの多さは、本来、大名などの武家領主の「家」の神(仏)霊であったものが、いわば地域社会の産土神化してゆくことを示すものであろう。国家神道の動きがある一方で地域社会のアイデンティティの核心を神格化された武家領主が担う意味は民衆にとっての武士像を考える上で好個の分析素材であろう。
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Research Products
(1 results)