2004 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄戦における人種関係問題と人間行動様式に関する社会史的研究
Project/Area Number |
13610400
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
田中 利幸 広島市立大学, 付置研究所(広島平和研究所), 教授 (10329336)
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Keywords | 沖縄 / 沖縄戦 / 日本軍 / 米軍・豪州軍 / 太平洋戦争 / 特攻隊員 / 戦争心理 / 人種関係 |
Research Abstract |
本年度前半は、昨年度から集中して行ってきた沖縄戦における神風特攻員の心理的背景の研究、特に学徒出身特攻隊員に自殺攻撃を決意させた心理的諸要因、自己の自殺行為に対する正当化、敵に対する意識形態などの分析を引き続き行った。とりわけ、学徒出身特攻隊員の中に顕著に現れている敵将兵、特に米軍将兵に対する「憎悪感の希薄性」、あるいは「敵に対する特定イメージまたは特定感情の欠落」がどこに由来するのかという問題を研究課題とした。と同時に、それとは対照的に、自殺攻撃を受けた連合軍側将兵の敵=日本人将兵に対する「特殊人種」観念が、いかに日本人全般に関する偏見的な人種観念の形成につながっていったのか、あるいは既存のステレオタイプ的な「特異日本人種」観念を、神風攻撃を受けることによってさらに強化させていったのか、その過程の分析研究に努めた。さらにまた、学徒出身特攻隊員の遺書、日記、手紙類の中には、他の日本軍将兵とは対照的に、「天皇」に関する言及や、「天皇崇拝心」を表現するような言葉が極めて少ないことも共通の特徴であるが、その原因に関しても調査研究を進めた。これらの研究課題のための参考資料としては、これまでに国会図書館、防衛庁防衛研究所、知覧特攻博物館、豪州戦争博物館、豪州国立公文書館などで収集した関連資料を活用した。 本年度後半は、学徒出身特攻隊員の中に共通に見られるこうした「敵イメージの欠落」が、果たして日本の神風特攻隊員にのみ見られる特殊なものなのか、あるいは国の如何にかかわらず戦闘機や爆撃機搭乗員に多かれ少なかれ共通して見られるものなのかに関する比較研究を、外国の関連出版物を参考にしながら比較研究を行った。その結果、この問題を取扱うにあたっては、戦闘機や爆撃機搭乗員の「敵に関する一般的観念」や「戦争倫理観」という、もっと幅広い問題設定からのアプローチが必要であるとの認識に至り、こうした問題についても内外の関連出版物を参考にしながら研究を進めた。
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