2004 Fiscal Year Annual Research Report
環境歴史学的視点に立つ中世荘園研究-大分県直入・大野郡域を中心に-
Project/Area Number |
13610406
|
Research Institution | BEPPU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
飯沼 賢司 別府大学, 文学部, 教授 (20176051)
|
Keywords | 台地 / 尾根 / 迫 / 地名型「名」 / 仮名型「名」 / 神社 / 磨崖仏 / 水 |
Research Abstract |
本研究は今年度最終年度を迎え、報告書の作成を行った。中心フィールドである大分県直入・大野郡域は、この3月31日をもって、竹田市と豊後大野市に再編合併され、両郡の郡名は失われた。その意味で、この4年間の研究は、結果として合併以前のこの郡域の市町村の古い資料、地図、地名等の発掘、記録化として意味を持っことになった。 この調査では、この地域のと特質を(1)阿蘇のカルデラの縁から張り出す台地地形、(2)くじゅう連山から張り出した尾根とその側面に尾根の地下から染み出した水によって形成された迫(小谷)地形に特色づけられる地域、(3)祖母山系から流れ出す緒方川が形成した緒方盆地の三つに類型化し、(1)荻台地、(2)竹田市三宅、朝地町、(3)緒方町をフィールドに設定し、環境歴史学の方法論によって中世荘園の実像に迫ろうと試みた。今年度は最終年度の報告書作成に向け、比較研究として和歌山県紀ノ川沿いの調査と越前の古代荘園の故地の調査を行い、大分県南部に設定したそれぞれの地域での補足調査を実施し、これまでの調査を検討する作業を行った。その結果次のような調査・研究成果を得ることができた。 【1】荘園の収取の単位であり、経営の単位でもある「名」(みょう)の構造を景観論の中でどのように位置付けられるのかを検討した。この地域では、地名型の「名」と仮名型の「名」があるが、前者が圧倒的に多い。後者は(3)の緒方荘域の緒方盆地の中に限定され、緒方川の水を利用した大規模灌漑の水系にその耕地が存在している。それに対して、前者も水田を編成する単位ではあるが、野や野地や畠が名を結びつけるものとなっており、同じ台地や同じ尾根を共有する地域を名の領域とする傾向が見られる。これは一見水系とは無関係なもので編成されているように見えるが、尾根は地下水が通っており、見えない同一の水系で編成されているともいえる。 【2】この地域に見られる平安時代末の磨崖仏(宮迫・普光寺など)や神社、寺院は里と山の境界点に創られている。特に磨崖仏や神社は尾根の中を流れる水や川の水を意識し、水の恵み、開発の象徴としてこれらを創建している。これに対して、直入・大野郡に多い六地蔵塔は中世後期に領域が確定してくる後期型「名」の領域の境界点に建立される傾向があ一る。
|
Research Products
(2 results)