2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610411
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
舘野 和己 奈良女子大学, 文学部, 教授 (70171725)
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Keywords | 『和名類聚抄』 / 『風土記』 / 木簡 / 郷(里) |
Research Abstract |
今年度も昨年に引き続き2つの作業を行った。1つは古代村落の政治的現れである郷(里)に関するデータベースの作成である。すなわちExcelを使って『和名類聚抄』に記載された郷名を基本にしつつ、木簡や『風土記』・古文書などによって知られた郷(里)名も含めてデータベースを作成するという作業を昨年度来行っている。今年度もその作業を継続したが、まだ完成には至っていない。 もう1つはやはり昨年度に引き続き、古代遺跡や村落の故地の現地調査を、(1)福岡県福岡市・前原市・志摩町、佐賀県神埼町、(2)山口県徳山市・熊毛町・大和町・大島町などで実施した。(1)では福岡市比恵遺跡・前原市雷山神籠石・神埼町吉野ヶ里遺跡などの古代遺跡の現地調査と共に、大宝2(702)年「筑前国嶋郡川辺里戸籍」が残る川辺里の有力比定地である志摩町馬場の地の現地調査を、そして(2)では周防国東部の郷比定地・式内社などの現地調査を行った。 これらの中でほぼ1島のみで周防国大島郡をなす山口県屋代島について述べる。同郡は『和名類聚抄』によると、屋代・美敢・務理の3郷から成る。その現地比定を試みると、屋代郷は大島町東屋代・西屋代の地にあたる。そして美敢郷は同町東三蒲・西三蒲にあたるとみられる。それは武蔵国埼玉(さきたま)郡を木簡で「策覃郡」と書く例があることからすると、「美敢」を「みかま」と読むことができるからである。そして務理郷は同島東部の東和町森に比定できよう。こう見ると、3郷はいずれも屋代島に散在する平地のうち、比較的広い面積を占める所を中心に編成され、その近辺の小平地などを包括したと考えられる。これは昨年度に調査した豊後・出雲での結果とも合致するところであり、古代における郷編成の傾向あるいは「原則」として捉えることができよう。
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Research Products
(2 results)