2003 Fiscal Year Annual Research Report
清末民初における地方エリートの地域発展戦略の史的研究
Project/Area Number |
13610416
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
田中 比呂志 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (90269572)
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Keywords | 張謇 / 諮議局 / 地域エリート / 預備立憲公会 |
Research Abstract |
本年度は、第一に、研究実施計画に従って、張謇の「村落主義」思想や立憲・地方自治に関する活動について、省・国家の中で位置づける作業を進めた。具体的には以下のとおりである。 当時の新聞や公報類を読み進め、前年度までに収集した史料と比較・検討を進めた。江蘇省という政治的空間の中で張謇の活動や南通の事例を相対化するために、江南エリートとの比較、江南エリート等との関係性について検討・考察し、「清末の江蘇省における諮議局の設置と地域エリート」という論考としてまとめた。それによれば、立憲制の導入・地方自治の実施にさきだって、地域(方)エリート等は教育会や商会などの様々な団体を結成しつつあり、とりわけ「地方自治研究会」や「地方公益研究会」といった法政団体の結成が顕著になりつつあった。やがて諮議局設置を契機として地域(方)エリート等は上海や南通といった県レベルを超えて、江蘇省という範囲での関係性を形成・構築していくことになった。その代表的な組織・団体が鄭孝胥・張謇等によって結成された「預備立憲公会」であった。同会は江蘇省出身者を主体として全国的に会員が存在し、官僚経験者も所属する団体であった。 やがて諮議局設置の具体的な準備が進められる中で、地域エリート等の参加は不可欠であったが、張謇等は「江蘇諮議局研究会」を結成した。同会は、江蘇省下の各県全県から代表者を選出して結成されており、江蘇省全体の地域エリート等を結集したものといえるだろう。そして清朝が諮議局設置準備のために設置した蘇属諮議局籌辧所、寧属諮議局籌辧所に人員を推薦・派遣する重要な母体となったのであった。以上に述べたように、清末の諮議局設置はいわば江蘇省の地域エリート同士の連携を推進した重要な契機となったのであった。 第二には、上海図書館にてさらなる関連史料の収集を行った。その結果、南通の教育会や学校に関する史料を閲覧・収集した。
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