2004 Fiscal Year Annual Research Report
ワシントン体制下の中国東北地方政府対日政策決定過程と日中近代文明観の相克の解明
Project/Area Number |
13610425
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松重 充浩 日本大学, 文理学部, 教授 (00275380)
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Keywords | 中国東北 / 満州 / 中国近代史 / 日中関係史 / 内モンゴル |
Research Abstract |
本科研最終年度である本年度は、これまでの研究成果を別途作成冊子である「研究報告書」にまとめる作業が中心となった。「研究報告書」の内容概略は以下の通りである。 (1)所謂「ワシントン体制」下において、中国東北地域統全域を事実上の支配下においていた張作霖奉天省政府は、日本側の対中融和的政策を背景に、地域インフラ整備を中核とした産業政策を積極的に推進した。それは、単に日本側の対日融和政策が背景となったということだけではなく、日本側の景気後退に対応した施策であり、それまでの対日癒着的な発展戦略から相対的に自立的な発展戦略を追求することでもあった。 (2)上述の新たな発展戦略は、当然対日競合的な側面を持っていた。ここに、日本側の反発を抑え込み得る「正当化」論理を必要となった中国側が着目・喧伝したのが、第一次世界大戦を契機に広く主張され始めた新たな「文明観」だった。同「文明観」は、民族自決や紛争解決手段としての戦争の違法化を柱にしたものであり、中国東北地域においては、奉天省議会や奉天総商会に結集していた在地有力者層を中心に強く支持・主張されていた。 (3)以上の状況を背景に、中国東北地域では、日中間において新たな外交案件が提出されることとなった。具体的には、教育権回収問題や治外法権回収問題という形で展開した。同問題をめぐる日中交渉においては、前述した新「文明観」をめぐり日中間で激しいやりとりがなされることとなる。両者の交渉は、結果として、具体的な妥協点を見出すことがないまま終わることとなるが、その過程を詳細に分析すれば、新「文明観」を相互依存の強化および強度なナショナリズムの突出抑制に利用できる可能性が提示されていた点は、「満洲事変」回避の可能性を考察する上での一つの示唆を示すものでもあった。
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Research Products
(1 results)