2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610427
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
浅井 紀 東海大学, 文学部, 教授 (00102814)
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Keywords | 保明寺 / 西大乗教 / 観音信仰 / 無生老母 / 内丹法 / 阿弥陀信仰 / 弥勒下生信仰 / 龍華経 |
Research Abstract |
今年度は、中国の明代の華北における民間宗教結社の形成と展開、を主たる研究内容とした。具体的には、明代天順年間(1457-1464)に皇帝英宗の勅命で、北京郊外の黄村に建てられた尼寺の保明寺を根拠地とする教派と、その後継教派を研究した。保明寺は外見は尼寺で、その教義は観音信仰を中心としていた。しかし実際は、その教義・修行・儀礼には道教の内丹法が混入しており、仏教と道教の折衷的性格が強かった。保明寺の初代住持である呂〓は仏教の尼僧と道教の女道士を折衷した姿をしていた。また、その教徒も多数の男女により構成されており、華北各地にその組織が作られ、指導的教徒により管理されていた。男女を併せて組織化したそのやり方は、正統仏教の寺院というよりも、民間宗教の教団に酷似している。 16世紀に保明寺は明朝の後宮の諸勢力、すなわち皇太后・皇后・外戚・貴族・宦官を後援者や教徒とし、その勢力の拡大と保全を図った。それと同時に、保明寺の教派の教義を説く宝巻形式の経典の編纂が行われるようになった。特に、五代住持とされる帰円により、いわゆる西大乗教五部六冊が作成され、刊行されるにいたった。この保明寺の教派とその宝巻は華北における民間宗教諸教派の形成に大きな影響を与えるにいたった。 本研究では特に西大乗教から東大乗教、さらに大乗円頓教へと続く流れを軸に、明代華北の民間宗教諸教派の形成過程、宝巻の教義の形成・継承・発展の過程を明らかにすることが出来た。ことに、明清時代を代表する宝巻『龍華経』がこのような保明寺の教派の流れを汲むものであることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)