2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610429
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高綱 博文 日本大学, 通信教育部, 教授 (90154799)
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Keywords | 日本占領下の上海 / 木村英夫 / 『亜細亜再建秘録』 / 上海日本人居留民 |
Research Abstract |
私は、日中戦争期における上海に関する一次史料である木村英夫の遺稿『亜細亜再建秘録-敗戦前夜』を熊本において発見し、同遺稿を校閲し解題を付して、『日本占領下上海における日中要人インタビューの記録』として不二出版から刊行した。 同遺稿『亜細亜再建秘録』は、木村英夫が上海日本総領事館特別調査班のスタッフとして1941年4月〜1944年10月に行なった上海在住あるいは上海来遊の日中要人へのインタビューの記録である。同遺稿には、1941年〜1944年にかけて日中戦争=日中関係の現状と展望についての日中双方の要人たちによる生の声に近い証言(談話)が時系列的に200編以上を収録されており、日中戦争史に関する貴重な根本史料であることは疑いないものと言えよう。同遺稿はそれを編纂した木村英夫の本来的な意図に従うとすれば、日中戦争=日中関係の行き詰まりに憂慮した日中両国の要人たちのさまざまな意見・批判・建策などを時局の変化に即して読み解くことが求められる。また、日本占領期の上海に関する貴重な証言史料集であるということも見逃すことはできない。同遺稿には、上海時局の変動にともないアジア太平洋戦争の勃発による上海の国際的存在価値の変貌をめぐる議論や上海租界の性格をめぐる議論が数多く紹介されているが、それ以上に注目されることは日本占領下の上海に生きていた中国人の生の声が記録されていることである。それらの多くは中国民衆の声を代弁するスタイルで語られており、日本の上海占領政策に対する批判・不満・怨嗟の声が日を追って高まっていったことが窺われる。同遺稿は中国人の視線から見たところの日本占領下における上海の実態を同時代的に語っている史料としてもたいへん貴重なものである。木村のインタビュー記録はその全容に触れてはじめて史料的価値が明らかになるものであり、その全インタビュー記録=『亜細亜再建秘録』を公刊することは日中戦争史の研究は言うまでもなく、日中戦争期の上海史の研究にとっても画期的な意義を持つものであると確信する。 また、私はハーバード大学アジアセンター主催の国際シンポジウム"Wartime China : Regional Regimes and Conditions、1937-45"(June27-29,2002)において、上海日本人居留民の戦争への記憶と感情をテーマとした"Shanghai Nostalgia Among Postwar Japanese Repatriates"との研究報告を行なった。
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Research Products
(1 results)