2002 Fiscal Year Annual Research Report
高麗末期から李朝初期における対明外交儀礼の基礎的研究
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13610435
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
桑野 栄治 久留米大学, 文学部, 助教授 (80243864)
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Keywords | 李朝初期 / 成宗 / 遥拝儀礼 / 望闕礼 / 朝賀礼 / 会礼宴 / 経国大典 / 国朝五礼儀 |
Research Abstract |
研究期間の2年目にあたる平成14年度は、李朝初期(ほぼ15世紀に相当)のうち、『経国大典』(1485年施行の総合法典)が成立する第9代朝鮮国王成宗代(1469〜94年)に時期を絞り、正朝・冬至に朝鮮王宮にて実施される対明遥拝儀礼(望闕礼という)に関する官撰史料を整理・分析のうえ、すでに検討済みの15世紀前半の諸事例との比較検証を行った。その成果の概要は以下の通りである。 1 対明遥拝儀礼の運営に関する法的制度の確立過程を、『李朝実録』を中心に分析した。その結果、『経国大典』の基盤となった『辛卯大典』(1471年施行)の段階では、地方官の遥拝規定、王妃に対する朝賀規定の2点を欠いていたことが明らかとなった。 2 遥拝儀礼が中止された事例を『李朝実録』から抽出し、その事情を明らかにした。具体的には、(1)国喪(朝鮮王室の不幸)、(2)国王の病気、(3)気候条件(雨雪などの悪天候)の3点であるが、朝鮮国王と儒者官僚は遥拝儀礼を当然の国事行為と考えていたため、『経国大典』と『国朝五礼儀』には遥拝儀礼の中止に関する規定はない。 3 遥拝儀礼終了後の朝賀礼と会礼宴には、受職女真人をはじめ日本・琉球からも多様な通交者が参席していることに注目し、彼ら「朝貢分子」の朝鮮観を考察した。成宗代以降は偽の琉球使節が横行するが、「朝貢分子」の代表格は朝鮮の藩屏を自称する対馬宗氏である。朝鮮政府が北方の女真人を厚遇した背景には辺境の防備という現実的な軍事問題があり、南方の倭冠対策として倭人を撫接する外交政策と相通ずる。 李朝初期における対明遥拝儀礼はほぼ検証を完了したため、最終年度の平成15年度はこれまでの成果をもとに高麗末期(14世紀後半)を逆照射することを計画している。これにより、高麗末期・李朝初期における対明遥拝儀礼=外交儀礼の全貌が明らかとなろう。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 桑野 栄治: "ソウルの儀礼空間 -朝鮮世祖代の望闕礼と圜丘壇祭祀"アジア遊学. 34. 23-35 (2001)
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[Publications] 桑野 栄治: "朝鮮世祖代の儀礼と王権 -対明遥拝儀礼と圜丘壇祭祀を中心に-"久留米大学文学部紀要(国際文化学科編). 19. 89-114 (2002)
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[Publications] 桑野 栄治: "朝鮮成宗代の儀礼と外交 -『経国大典』成立期の対明遥拝儀礼-"久留米大学文学部紀要(国際文化学科編). 20(印刷中). (2003)