2001 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアとモンゴル-モンゴルによるロシア支配とその歴史的意味に関する研究-
Project/Area Number |
13610438
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栗生澤 猛夫 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40111190)
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Keywords | ルーシ / ロシア / モンゴル / キプチャク・カン国 |
Research Abstract |
4年の計画で開始された本研究の初年度の目標は、モンゴル人によるロシア(ルーシ)支配がどのようにして樹立されたかを、年代記その他の史料の分析によって具体的に跡付けることにあった。初年度の研究の成果は、本実績報告の「研究発表」欄に記載の通りであるが、まず、「ルーシとモンゴル」論文においては、モンゴル人のルーシ占領後樹立されたキプチャク・カン国の初期における対ルーシ政策が検討された。そこでは最初の十数年は、支配は具体的な形をとることなく経過したこと、その間の支配は、ルーシ諸公のサライ(カンの本営、カン国の首都)への出頭とカンへの恭順の意の表明、またカンからの自領への統治権の付与という形(すなわちカン国側からみれば間接統治の形態)で行われたこと、その後一三世紀五〇年代後半から、カン国のルーシ支配は徴税体制の確立という形で具体化され始めたこと、その際、当時のルーシの主要な年代記(たとえば『ラヴレンチー年代記』など)の記述にもかかわらず、ルーシにおいてはカン国の支配機構樹立の試みに対して相当の抵抗がみられたこと、などが示された。続いて「カン国のルーシ支配の構造」論文では、この支配の要であった「バスカク制」について検討された。そこでは年代記等の諸史料の検討の結果、バスカクをルーシ駐在の軍事統治組織の長とみるこれまでの通説は受け入れがたいこと、むしろバスカクはルーシ諸公を監視しつつ、またかれらと緊密に連携しながら徴税と徴兵に象徴される支配を貫徹しようとしたこと、こうしたあり方は真に間接支配というにふさわしいものであったことなどが示された。本年はまた「タタールのくびき」において、この問題のもつ意義について概説的に論じた。予算面では、資料収集と意見交換のための海外出張と、理論的裏付けのための図書(消耗品)の購入に予想以上の出費があったが、これらは必要不可欠なものであったと考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 栗生沢 猛夫: "ルーシとモンゴル-モンゴルによるルーシ支配の始まり"西洋史論集. 5. 1-26 (2002)
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[Publications] 栗生沢 猛夫: "キプチャク・カン国のルーシ支配の構造"平成13年度科研費報告書(基盤研究(A)(1),代表者 豊川浩一). 1-21 (2002)
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[Publications] 栗生沢 猛夫: "中世「ロシア人」の「民族意識」"大貫隆 編『歴史と空間』(『歴史を問う 3』). 153-190, 249-253 (2002)
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[Publications] 栗生沢 猛夫: "タタールの「くびき」"しにか. Vol12,No.11. 58-62 (2001)