2002 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアとモンゴル―モンゴルによるロシア支配とその歴史的意味に関する研究―
Project/Area Number |
13610438
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栗生澤 猛夫 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40111190)
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Keywords | ルーシ / ロシア / モンゴル / キプチャク・カン国 / アレクサンドル・ネフスキー |
Research Abstract |
4年計画で実施された本研究の第2年度の目標は、主としてモスクワ台頭以前のルーシとキプチャク・カン国の関係を解明することであった。第2年度の研究の成果は、本実績報告の「研究発表」欄に記載のとおりであるが、もっとも重要な成果は、脱稿済みで『北海道大学大学院文学研究科紀要』第110号(平成15年7月)に掲載予定の「アレクサンドル・ネフスキーとモンゴルのルーシ支配」(400字詰め原稿用紙換算240枚)である。これはモンゴルの侵入とキプチャク・カン国の成立後、そのルーシ支配が樹立されていくいくが、その時期にウラジーミル大公であったアレクサンドル・ネフスキーに焦点をあて、モンゴル支配確立に際しかれが果たした役割を明らかにしょうとしたものである。ドイツ騎士団やスウェーデン人の侵入を撃退したロシア史上最大の英雄の一人であるアレクサンドルは、一方でモンゴル支配を無抵抗で受け容れ、モンゴル支配を現実化した人物であることの意味をさぐろうとしたものである。上記拙稿は、これをソヴィエト期と最近のロシアの研究者の所説を逐一検討することによってはたそうとした。その際特に留意したのは、各研究者が依拠している史料的基盤そのものの妥当性を会わせ問うということであった。一つの論文としては異例の長さになった理由はこの点にあるが、そのためこれまでの研究の問題点を明確にすることには成功したと考えている。すなわち、従来は、アレクサンドルの前半生における対西方カトリック諸国との対決姿勢に大きな注意が払われるあまり、かれの後半生における対モンゴル恭順政策の意味が十分に考慮されてこなかったのである。今後はこれを統一的に考察する必要性があるということである。なお本拙稿は、伝説的英雄としてではなく、歴史的実在としてのアレクサンドル像構築のための、新たな探求の必要性を強く求めるものであったため、現在はその作業にとりかかっており、本年度中にはアレクサンドル論の第二部として完成予定である。なお「研究発表」欄には記載していないが、14年度にはさらに、本研究に直接関わる2編の書評(一編はロシア語図書、他は邦語図書)を執筆・発表している。
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Research Products
(2 results)