2003 Fiscal Year Annual Research Report
古代ローマにおけるトリブスの社会的諸機能についての研究
Project/Area Number |
13610439
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
砂田 徹 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (10206576)
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Keywords | 古代ローマ史 / トリブス / 穀物配給 |
Research Abstract |
古代ローマのトリブスは、共和政期においては、民会での投票単位にはじまり、徴兵・徴税、審判人の選出等、ローマ人の社会・政治生活において多様な機能を果たしていたが、体制が共和政から帝政へと移るにともないその機能をほとんど失っていく。その中で帝政期に入っても唯一残された機能と考えられてきたのが、穀物の無償配給との関わりである。本研究の最終年度にあたる平成15年度は、この穀物配給とトリブス制との関連を考察した。 その結果、第一に、決定的な史料が存在しないため、穀物配給の単位となっていたのがトリブスではなく、ローマ市の地縁的組織をなすウィクスであったとする説が存在するものの、関連史料の検討からは、それを従来どおりトリブス単位と考えて不都合のないことを指摘した。とはいえ、穀物配給の対象となっていたのがあくまでもローマ市居住のローマ市民であった以上、<35トリブス>として現れる組織は、ローマ市民全体を包含する本来のトリブスではなく、ローマ市居住者の組織としてのトリブスにすぎなかったと考えられる。すなわち、いまやトリブスに二重の意味が生じていたことになるが、それはおそらくカエサル以降であった。このトリブスの二重性と関連して、第二に、帝政期の碑文におけるトリブスの内部構造を示す記述が、本来のトリブスのそれではなく、この穀物配給のための組織に関連していた可能性を指摘した。碑文において詳細に語られたトリブスの内部構造も、トリブスが確固たる組織を保持し続けていたことを実証するものではないのである。 このように見てくるならば、帝政期に入っての民会の衰退とともに、トリブスの社会的機能も大きく失われていったと結論づけることができよう。
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Research Products
(1 results)