2003 Fiscal Year Annual Research Report
南部アフリカ人種関係史における「混血」と「クレオール」
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13610445
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Research Institution | TOKYO UNIVERSITY OF FOREIGN STUDIES |
Principal Investigator |
永原 陽子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90172551)
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Keywords | 南部アフリカ / 人種 / 混血 / クレオール / カラード / アフリカーナー / 奴隷制 / 先住民 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の最終年度として、前年度までに収集した史・資料の分析を行い、下記のような暫定的結論を得た。(それらについては、現在、(1)ケープ初期植民における植民者・奴隷・先住民の関係史、(2)ナミビアの「レホボス」の成立史、(3)ナミビア植民地期の「混血」問題にかんする論文としてとりまとめ中である。) 1.ケープの初期殖民において植民者、先住民(コイコイ人)、奴隷の社会経済的相互依存関係は従来考えられていたよりも深く、したがって、「人種」間の婚姻(および婚姻外の性関係)の頻度も高かった。19世紀に「カラード」と「アフリカーナー」という対立する人種カテゴリーに分離していく人々の間の差異は、従来考えられていたよりも小さかった。 2.1.の点より、植民者、先住民、奴隷の相互依存関係は、通常考えられているように植民者を主体とした「クレオール化」過程としてとらえられるばかりでなく、先住民を主体としたクレオール過程としてもとらえられる。二つの側面を自覚的にとらえて民族集団となったのが北部ケープの「グリクワ」およびナミビアの「レホボス」だった。 3.ケープにおける「人種」カテゴリーの形成過程と言語カテゴリーの形成との間には大きなズレがあった。従来の研究では、「アフリカーンス語」形成が「アフリカーナー」民族形成と過度に結びつけられたため、19世紀ケープ社会のクレオール的特色を十分にとらえていなかった。 4.ナミビアのレホボスはケープにおいてすでに「クレオール化」した「オルラム」がさらに植民者と「クレオール化」する、という二重の「クレオール化」によって独自の集団と認識されるようになった。 5.いわゆる「混血」集団の形成史としてとらえられていない、先住アフリカ人と植民者との間の関係においても、ナミビアのヘレロとドイツ人植民者の間のように、植民地体制を大きく左右する越境的「人種関係」が存在した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 永原陽子: "南アフリカのアフリカーナー"史学雑誌. 110-8. 100-107 (2001)
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[Publications] 永原陽子: "「真実と和解」から「真実と正義」へ"ワールド・トレンド. 82. 20-23 (2002)
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[Publications] 永原陽子: "「新しい歴史教科書」を模索する南アフリカ"歴史評論. 632. 57-60 (2002)
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[Publications] 永原陽子: "アフリカの人々の暮らし"歴史地理教育. 658. 24-27 (2003)
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[Publications] 永原陽子: "「女子割礼」・FGM問題の歴史的考察のために"地域研究論集. 6-1. 137-159 (2004)
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[Publications] 永原陽子ほか: "帝国主義時代と現代"未来社. 391 (2002)
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[Publications] 永原陽子ほか: "歴史の壁をこえて"法律文化社(印刷中). (2004)