2001 Fiscal Year Annual Research Report
「書籍」史料にもとづく中世ヨーロッパ社会史的大学史研究
Project/Area Number |
13610456
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大嶋 誠 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (90108613)
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Keywords | 中世史 / 大学史 / パリ大学 / ソルボンヌ大学 / 記念梼設定簿 / 書籍 / 書籍商 |
Research Abstract |
上記研究課題は,一つには「書籍商」と大学との関係を手がかりに,二つには「学寮」への書籍の寄贈者ないし遺贈者,さらには図書館利用者を手がかりに,中世パリ大学と当該期の杜会と関わりを明らかにすることであるが,平成13年度の研究は,「学寮」に関連する研究を中心に進められた。その成果は以下の通りである。 1.平成13年11月,パリにおいて行ったソルボンヌ学寮蔵書関係史料調査から,年代的には,1402年から1536年をカヴァーするソルボンヌ学寮図書館の図書帯出簿(マザラン図書館所蔵・整理番号ms.3323,olim 576)は,正規寮生,元寮生,寮外者などおよそ350人の人物情報を提供し,書物を通した大学の社会史的研究にきわめて重要であることが確認された。 2.当該図書帯出簿を対象とするプロソポグラフィックな手法を用いた詳細な分析は,今後の作業に拠らねばならないが,さし当たり,帯出者の出身地についてみれば,パリ周辺および北フランスの出身者が多数を占める。南フランスの出身者は皆無である。フランス以外についていえば,ベルギー,オランダの出身者が多く,イタリア出身者は少ない。これらの結果は,中世後期のパリ大学の構成員の出身地を対象としたこれまでの研究成果とほぼ一致している。 帯出者の経歴については,教会の要職(枢機卿,司教,大修道院長)から参事会員,主任司祭,一介の修道士まで多様である。なお,修道士についていえば,托鉢修道会系修道士は含まれない。 このように,当該図書帯出簿が提供する人物情報の分析は,従来の記念梼設定簿等にもとづく大学と社会の関係性の検証をより深化させることを可能にすると考えられる。
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