2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610458
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Research Institution | HOKKAIDO TOKAI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐保 吉一 北海道東海大学, 国際文化学部, 助教授 (00265109)
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Keywords | 司教逮捕 / 即位憲章 / 教会法 / ペーダー・パラディウス / 中央集権化 / ヨハン・ブーゲンハーゲン |
Research Abstract |
交付申請書に記した今年度の研究実施計画に基づいて研究を行った。特に、本研究の実施最終年度にあたる本年は、デンマーク宗教改革実施過程最終段階、即ちデンマーク国王クリスチャン三世のコペンハーゲン入城(1536年8月)以後の動きを考察した。概要は以下の通りである。 クリスチャン三世は顧問と軍上層部との秘密会合を行った上で、1536年8月12日に予告なしに7人いるカトリックの司教を全員逮捕し、拘禁した。そして、王国顧問会議を招集してその逮捕を認めさせ、新たにルターの教えを国教に採用することを承認させた。10月中旬には聖職者以外の諸身分を首都に集め、伯爵戦争(1534-36)の戦費調達に関する諸侯会議が開催された。この会議の結果は即位憲章及び協定に結実している。その主な内容は次の通りである。(1)カトリック聖職者の罷免、教会関係領の没収、(2)国政は国王と王国顧問会議が共同して行うこと、(3)引き続き選挙王制を維持すること、(4)三大中央官職(宮廷長官、宰相、国軍元帥)は王国顧問から任命されること、(5)貴族達が地方統監職、中央官職を独占し、小作人等に対する領主裁判権を獲得すること、(6)人身の自由は貴族だけに保障されること。結局、伯爵戦争に勝利した国王と貴族のみが様々な特権を獲得したのであった。特に国王は教会領を王領に編入した為、経済的にも影響力を高めることになった。 さらに重要なことは、次期国王としてクリスチャン三世の息子のフレデリック(後のフレデリック二世)が選出されたことである。 そして、1537年にはデンマーク国教会の基本法である「教会法」が制定され、その後の説教、聖職者選出、学校制度、救貧制度に多大な影響を与えた。なお、1550年には本格的なデンマーク語訳聖書『クリスチャン三世欽定訳聖書』が出版され、デンマークの宗教改革は一応の完成をみるのである。このデンマーク宗教改革実現過程を政治的にみる場合、中央集権化の進展と捉えることが出来、ある意味で1661年の絶対王制導入の嚆矢ともなっている。
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Research Products
(1 results)