2001 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島と朝鮮半島の国家形成期における武器発達過程の考古学的比較研究
Project/Area Number |
13610468
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 岡山大学, 文学部, 助教授 (50238995)
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Keywords | 古墳時代 / 武器 / 鉄鏃 / 日韓交流 |
Research Abstract |
日本列島の古墳時代前期から中期への過渡期に生じた武器様式の革新について、平成13年度はとくに鉄鏃を取り上げ、列島内における革新の具体的様相と、それに影響をもたらした朝鮮半島南部の鉄鏃の実態を明らかにした。まず、列島内において、前期末(8160)16中期初頭に新しく出現する鉄鏃の型式を、新たに購入した調査報告書や実見によって分析した結果、北部九州、瀬戸内中部、近畿、東海の各地域において地域色が認められることを確認した。このことによって、新型式の鉄鏃の出現は、汎列島的な武器様式革新の動向に乗りながらもその具体的様相は斉一的ではなく、上記のような各地域それぞれの技術的伝統や対応の仕方の違いによって多様なあり方を示すことが判明した。次に、当該時期の朝鮮半島の鉄鏃を、購入した調査報告書や実見によって検討し、日本列島の新型式の鉄鏃と比較した。その結果、列島内において地域色をみせる新型式の鉄鏃のうち、朝鮮半島のものにもっとも近い形態をとるのは北部九州のものであり、近畿とりわけその中枢部とされる古市古墳群の鉄鏃には旧来の特徴が比較的よく残ることが判明した。さらに、北部九州の新型式の鉄鏃が朝鮮半島のどの地域の鉄鏃と親縁関係にあるかを追求するために、朝鮮半島の慶州地域(後の新羅)、洛東江中(8160)16下流域(後の加耶)、西南部地域(後の百済)などの諸例と比較したが、本年度内には明確な結論は得られず、次年度以降の課題を提供した。上記の諸作業を通じて、日本列島の古墳時代前期(8160)16中期に認められる武器様式の革新は、近畿を中心とした一元的なものではなく、列島諸地域と朝鮮半島諸地域との多様で複雑な交流関係の中で発生した現象である可能性が高まり、また武器の検討を経てその諸関係の具体的様相の解明に通じる手がかりが得られた。
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Research Products
(2 results)