2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島と朝鮮半島の国家形成期における武器発達過程の考古学的比較研究
Project/Area Number |
13610468
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 岡山大学, 文学部, 助教授 (50238995)
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Keywords | 古墳時代 / 武器 / 鉄鏃 / 刀剣 / 日韓交流 |
Research Abstract |
日本列島の古墳時代前期から中期への過渡期(4〜5世紀)に生じた武器様式の革新について、平成14年度は、前年度に成果の上がった鉄鏃、および刀剣類を中心に、列島における革新が、朝鮮半島南部のどの地域からの影響によって進んだかという問題について検討を進めた。具体的な作業として、第一に、朝鮮半島南部における当該時期の鉄鏃・刀剣類の地域色を明らかにするために、半島南東部の慶州地域(新羅地域)、南西部の全州・光州・羅州地域(いわゆる「慕韓」地域)および西部の扶余・公州地域(百済地域)の資料を実見・観察した。その結果、南東部の慶州地域は鉄鏃・刀剣類とも4〜5世紀には列島のものと差異があることが確認できた。また、南西部および西部は当該時期の資料は多くないが、5世紀後半以降の資料は列島のものと類似する可能性を見出すことができた。なお、朝鮮半島のとくに南西部・西部と日本列島の資料を比較するうえで必要な時期的併行関係の確定を行う目的で、韓国全南大学校博物館の協力を得て、編年基準となる土器および墳墓樹立土製品の実見・記録・検討も進めた。朝鮮半島中南部のいわゆる伽耶地域の資料についても、新たに購入した発掘調査報告書・研究書等を通じて検討したが、馬具などの関連資料も考慮すると、とくに5世紀前半には伽耶東南部の金海・釜山地域との親縁性が強く、5世紀中葉を中心に伽耶中北部のいわゆる大伽耶地域との関連が強くなるとの見込みを得た。このことについては平成15年度に資料の実見・観察を行って確証を得る予定である。平成14年度の研究の実施によって、日本列島と朝鮮半島の武器発達過程は、相互の各地域間の多様かつ複雑な空間的関係のもとで展開するのみならず、その関係は時間的にも変動していることが明らかになった。
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