2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島と朝鮮半島の国家形成期における武器発達過程の考古学的比較研究
Project/Area Number |
13610468
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Research Institution | Faculty of Letters, Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 岡山大学, 文学部, 助教授 (50238995)
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Keywords | 弥生時代 / 古墳時代 / 武器 / 日韓交流 / 認知考古学 |
Research Abstract |
日本列島と朝鮮半島における国家形成期、すなわち弥生時代から古墳時代にいたる時期の武器発達過程の比較について、平成16年度は、平成13〜15年度に行った作業を総括し、成果報告書の刊行に向けて研究のまとめを行った。その結果、成果はつぎの3点にまとめられた。 1)日本列島と朝鮮半島とのあいだにおける武器やその組成の親縁度は、弥生時代初頭には高いが、弥生前期後半頃からしだいに低くなり、弥生後期から古墳前期にかけて両地域の武器の親縁度は最低となる。4世紀後葉の古墳前期末から中期初頭になると、日本列島の武器の形態・組成および技術が朝鮮半島のそれに接近し、両地域の武器の親縁度は高くなる。そのピークは古墳中期後半の5世紀後半にあるが、6世紀に入るとふたたび親縁度は低下する。その背後には、4世紀後葉から5世紀後半にかけて、日本列島と朝鮮半島の勢力諸政治間で、軍事的側面を多く含む相互交流が強まったという歴史的事情が想定される。 2)日本列島では、紀元前3〜4世紀ころまでに朝鮮半島を経て伝播した弓矢および剣・矛・戈から構成される多様な武器組成が、後半とくに紀元後になって、弓矢と剣(または刀)という形に単純化し、騎馬戦や戦車戦に由来する矛・戈は衰退する。そして古墳時代以降、弓矢および接近戦用の剣・刀を中心とする歩兵用装備に武器組成が特化する。これに対して朝鮮半島では、紀元後、弓矢および剣・刀とともに騎馬戦に由来する矛が発達し、日本列島より組成は多様である。このような両地域の違いは、直接的には、中国から朝鮮半島北部で成長していた、実質的な騎馬戦隊を含む高度な軍事技術をもった高句麗などの政治勢力からの脅威の濃淡に起因すると考えられる。 3)武器の形態は、すべてが機能に決定されるものではなく、特定の地域において特定の時期に、象徴性と結びついた特定の形態的意匠が顕現することがある。弥生時代中〜後期の大形打製石鏃、弥生時代末〜古墳時代の鉄鏃、古墳時代中期の短甲などに、それが典型的に現れる。武器は、共同体や集団の外的拡張の場で用いられる道具であるので、こうした象徴的意匠は共同体や集団のアイデンティティと結びつく可能性が高い。古墳時代(三韓時代)の日本列島と朝鮮半島各地の武器にみられる意匠は、両地域の各勢力が国家へと統合される過程において重要な認知的役割を帯びた可能性が高い。 以上の成果を、研究成果報告書として刊行した。
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Research Products
(1 results)