2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610474
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
大塚 達朗 南山大学, 人文学部, 助教授 (10168990)
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Keywords | 縄紋時代 / 安行式 / 精製土器 / 粗製土器 / 紐線紋土器 / 技法 / クセ / 土器製作集団 |
Research Abstract |
本年度は、縄紋時代後期後半の安行式の粗製土器(具体的には紐線紋土器)を対象に検討を行った。 基本的な活動としては、関連資料の熟覧及び記録化(写真撮影・拓本作成)と関連文献の収集とを行った。本年度の基本的な活動を踏まえた検討結果を以下に述べる。 まず、安行式の精製・粗製を含めた器種構成で量的に主体を占める粗製土器つまり紐線紋土器から読みとれるのは地域差程度であると決めつけ、粗製土器に基づき文化社会の復原を志向することが希薄な研究現状を再確認せざるを得なかった。そこで、紐線紋土器から文化社会的コンテクストを把握できる特徴を探った。従来は、紐線紋と器面を覆う条線紋と紐線紋間の単位紋との施紋順序から紐線紋土器の諸類型が設定されてきたが、本研究では、紐線紋自体の表出技法の違いに着目して紐線紋を再定義し(工具による凹紐線紋/工具や指頭による凸紐線紋)、少なくとも凹紐線紋土器、別種凹紐線紋土器、指頭による凸紐線紋土器、工具による凸紐線紋土器などが並存したことを明らかにした。さらに、施紋時のクセから分類群を見わたすと、凹紐線紋土器と凸紐線紋土器の一部が、工具使用技法と施紋時のクセから判断して、同一製作伝統を担う集団によって作られた、という新しい見解に到達した。その上に、凹紐線紋土器と凸紐線紋土器の一部にみられた工具使用技法と施紋時のクセは、帯縄紋系精製土器の主要器種にも見られることを明らかにできた。つまり、凹紐線紋土器と凸紐線紋土器の一部とかなりの種類の帯縄紋系精製土器が、特定土器製作集団による製作品であった可能性が高いことが判明したのである。と同時に、技法やクセが違う凸紐線紋土器や別種凹紐線紋土器は、それぞれ異なる製作伝統を担う別々の土器製作集団による製作品であった可能性が導かれたのであった。おそらく、それらのうちのある集団が帯縄紋系とは別になる入組紋系精製土器を製作したと思われるが、これに関しては今後の課題としたい。
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