2001 Fiscal Year Annual Research Report
中世都市の考古学的研究-石清水八幡宮門前と普賢寺谷中世居館群のGIS分析-
Project/Area Number |
13610475
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
鋤柄 俊夫 同志社大学, 歴史資料館, 専任講師 (40319471)
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Keywords | 中世都市 / GIS |
Research Abstract |
中世史を見直すにあたり、今、最も注目されているのが都市研究である。これまで、中世史研究の主要な対象は、荘園制の下で生活していた農民と武士であったが、中世の日本列島で活躍していたのは彼らだけではなく、商人や職人そして各地の都市的な場で生活していた人々でもあったことが、網野善彦氏や石井進氏をはじめとする多くの研究者によって指摘されてきている。しかしその一方で、それでは中世都市とは具体的にどのようなものであったのかについては、京都や鎌倉などの中心都市以外は明らかにされている部分が少ない。本研究ではこのような研究の現状を鑑み、京都府南部に所在する石清水八幡宮門前の木津川河床遺跡と、普賢寺川流域の居館跡群を対象にした考古学とGISの複合的な研究をすすめている。 平成13年度においては、最初に普賢寺川流域の居館群の中でも、最も保存状態の良い都谷居館跡を対象に、GIS分析を可能とするための遺跡情報のデジタル化として、デジタル画像から遺跡の等高線データを作成するソフト(アジア航測製「計測名人」)を導入し、その使用を試みた。ソフトはデジタルカメラで取得したステレオ画像を、自動計算によって等高線やベクトルデータおよび断面図などに転換するものであって、館跡などの測量作業を大幅に軽減しながら、しかもGIS分析に必要なデジタル情報の取得を可能とするものであることが確認された。今年度は、複数の郭からなる居館跡のうちの1郭のみのデータ化にとどまったが、次年度はこの方法を駆使して居館跡のデジタル化の拡張をすすめたい。 また木津川河床遺跡については、遺跡と遺物の分布調査をおこなった。GPSによって位置情報を取得しながら、4カ所以上での遺物の採集をおこない、おおむね平安時代以降で近世まで連続した遺跡を確認した。しかもその遺物の分布が調査地点ごとに微妙に異なっていることも確認され、それが中世都市の特質に関わってくる可能性を予測させるものともなった。これについてもGIS分析が期待できる。
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