2002 Fiscal Year Annual Research Report
表現構造にみる女性作家の〈国民化〉-明治期女性作家の文体と文章表現-
Project/Area Number |
13610501
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
菅 聡子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (70224871)
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Keywords | 女性作家 / 国民国家 / ジェンダー |
Research Abstract |
本年度は、国内外の国民国家論を渉猟し、国民国家をめぐる問題設定を明確にすることに努めた。その結果、文学への影響関係としては、従来、日露戦争や太平洋戦争に比して軽視されがちであった日清戦争が、明治二十年代から三十年代文壇における批評の布置・期待される作品傾向・メディアの変容等々に、<国民>という概念に基づいた重大な影響を及ぼしていることを新たな問題意識として設定し、具体的な調査・分析・考察をすすめた。 まず、前年度から継続して、明治期の女性表現をめぐるジェンダー機制について、女子用文(女性用手紙の例文集)に見られる文章論を調査・分析した。また、個別対象として、女性作家樋口一葉の日記を精読し、一人の女性において、<国民>としての教化と表現の問題がどのように交差するのか、分析した。その結果、一つの具体例として<和歌>が担う共同の機制を前景化することができた。この場合の和歌は、例えば与謝野晶子にみられるような独創的な「個」の表出としてではなく、あくまでも「伝統」を継承した共同性として機能する。そして、その<和歌>の伝統、大和言葉の伝統は女性によって継承されるべきものとされるとき、<国民>としての共同性において、女性性の果たすべきとされた役割が明確になるのである。 明治近代における女性(作家)の国民化の問題は、さらに多方面から分析されねばならない。以後、同様の問題意識をもって研究を継続する。
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Research Products
(1 results)