2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国嶺南地域の摩崖石刻の資料化とそれに拠る中国山水文学の実証的研究
Project/Area Number |
13610534
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
戸崎 哲彦 島根大学, 法文学部, 教授 (40183876)
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Keywords | 摩崖石刻 / 山水文学 / 桂林 / 李渤 / 韓方明 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に現地で行った摩崖石刻の基礎的な調査と資料収集によって得た画像の解析等に基づいて『全唐詩』・『全唐文』・『全唐詩補編』・『全唐文新編』や明・清の録文、さらに桂林文物管理委員会『桂林石刻』と対校し、原文を可能な限り復元した。その結果、中国山水文学の研究に限らず、史学・哲学・宗教・美術等に及ぶ幅広い分野に対して貴重な資料を提供すると同時に、従来の録文及び学説に対して大幅な訂正を迫ることができた。今回の復元による訂正は、『全唐文』・『全唐詩』に所収の作品に限っても、未収録の作品を含めば、数百字から千字に達する。中でも李渤「南溪詩序」・李渉「南溪玄巖銘并序」は、ほぼ完全な状態で現存しており、中国山水文学発展の研究にとって重要な史料であるだけでなく、著名な書家・韓方明の書である可能性が高い、貴重な文化財でもあることが分かった。また、現存する韓雲卿「平蠻頌」も、その存在はほとんど知られていないが、高い史料性を有する。本研究の成果の一部は、中国・永州柳宗元国際学術研討会(2002.8)で、石刻を使った山水文学の必要を説いて「簡州石刻柳宗元《永州八記》略考」と題して口頭発表し、また桂林の石刻と山水について論文「桂林名山"象鼻山"与"漓山"」・「成句"桂林山水甲天下"の出自と典拠について」を執筆した。その他、島大国文年会(2002.12.7)で「桂林の石刻」と題して王正功詩の石刻について講演し、また鳥取県技術士会第2回研修会(2003.3.1)では「桂林の歴史と文物」と題して李渤・李渉の石刻を中心にした講演を行うなど、地域社会への還元と交流をはかった。但し今回の調査で満足のいく結果を得ることができなかったものもある。機材・道具をそろえた上で再度調査に臨む必要がある。
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Research Products
(2 results)