2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610536
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木津 祐子 京都大学, 文学研究科, 助教授 (90242990)
|
Keywords | 官話 / vehicle language / 琉球 / 境界 / 漂着 / 通事 / 中国語 |
Research Abstract |
本年度は、八重山博物館、沖縄県立博物館、沖縄県立図書館、琉球大学、法政大学沖縄文化研究所所蔵の、各種琉球「官話」資料を広く収集し、それらのリストを作成し、撮影の許可されたものについてはデジタル画像データに記録した。八重山博物館では、膨大な家譜資料に用いられる中国語による記録を分析し、それらが主に漂流・漂着関連の記事を含むことを明らかにした。また、八重山家譜の中に、乾隆年間の中国人漂着民姚恒順の「陳述書」が含まれることを今回新たに発見し、清代の中国沿海地域に広く流通した「官話」の実態を解明する大きな手がかりを得ることができたことは、最大の成果と言ってもよい。これら成果の一端は、関西大学東西學術研究所創立50周年記念国際シンポジウムにおいて、「漂着する官話」として口頭発表を行なった。また同じく八重山博物館所蔵の慶田城家文書『漢文』、竹原家文書『漢文集』は、漂着によってのみ中国と繋がることのできた八重山士人にとって、中国語学習の目的と結果、さらには伝統すらもすべて備える文書として極めて興味深いが、その内容を翻刻し、解題を施した(「慶田城家文書『漢文集』について」、『八重山博物館紀要』18)。また、沖縄県立図書館所蔵の『伯徳令及其他往復文』は、19世紀初頭に那覇に滞在したプロテスタント宣教師ベッテルハイムが、那覇の通事たちとの間に交わした書簡の一部を收めるが、それらはすべて中国語(官話)によって記されている。ベッテルハイムが那覇在住に際して雇用したのは広東人通訳であった。「ベッテルハイムと中国語-琉球における官話使用の一端を探る」(『同志社女子大学総合文化研究所紀要』19)は、ベッテルハイムとその通訳、さらに那覇の通事たちとを取り持った、「官話」のvehicle languageとしての性格について論じたものである。
|
Research Products
(2 results)