2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610538
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
阿部 泰記 山口大学, 大学院・東アジア研究科, 教授 (40091227)
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Keywords | 包拯伝説 / 石韻書 / 龍図公案 / 龍図耳録 / 石玉崑 / 地方劇「包公案」 / 宣講 / 包公廟 |
Research Abstract |
台湾中央研究院において収集した「石韻書」『龍図公案』と小説『龍図耳録』百二十回を、方言の使用、伝説の処理、叙事の順序などを比較してその相違の大きさを発見し、後者が聞き書きした講釈は現存の「石韻書」とは言えず、別の講釈を聞き書きした可能性が高いことを指摘した。従来「石韻書」が石玉崑の『龍図公案』を忠実に伝えるものと考えられてきたが、両者の内容の相違を指摘することによって、どちらが忠実であるか不明である点も明らかになってきた。また「包公案」のテキストや録音テープを台湾において収集し、台湾における包拯伝説の特徴を分析する準備をするとともに、これを従来から収集してきた地方劇「包公案」の中に加えて整理した。 包拯伝説は「公案」に分類される。そこで「公案」のさまざまな性格を知るために、民衆と密着した「聖諭宣講」の中の「案証」故事に焦点を当てて考察し、「公案」が因果応報を民衆に悟らせるために必要であったことを、清末の小説『躋春台』を例に取って明らかにした。『躋春台』の四十の「案証」の半分は裁判あるいは神判を描写している。従来、この作品は「三言二拍」などの「擬話本」という解釈もされていたが、そうした娯楽的な意図が見られない文学もあることを明らかにした。これに関連して「宣講」のテキストを日本・中国・台湾において収集し、その民衆への浸透の様子について分析する準備をした。 またインターネットを利用して中国・香港・澳門・広州・台北における包公信仰の実態を調査し、実際に現地に赴いて、清代・民国時代の地方志に記載された包公廟が今もなお存在して信奉されていることを確認し、その信仰の由来やあり方について分析した。 以上の成果を従来の研究に追加して、『包拯伝説の形成と展開』という書物として刊行する準備をした。
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Research Products
(2 results)