2001 Fiscal Year Annual Research Report
英文学における「中世」と「ルネサンス」の時代区分に関する表象文化論的考察
Project/Area Number |
13610554
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 康成 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10116056)
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Keywords | ルネサンス / 中性 / 時代区分 / シェイクスピア |
Research Abstract |
「中世」と「ルネサンス」の時代区分を具体的に見るには後者に視点を定めるのが妥当であり、シェイクスピアとエドマンド・スペンサーに考察の土台を置くことにした。シェイクスヒアの場合に限って報告すれば作品群を概観したとき、空間・場所的には土着のイギリスと異国のヨーロッパ大陸との大別がある。その上で、時間軸でみると、イギリスの場合は、殆ど同時代と思しき極少数の喜劇を除けば、12世紀から16世紀初頭に及ぶ英国史が構想されており、それと切れたかたちで古代英国の世界を描いている。ヨーロッパ大陸の場合は、同時代に属するものとして、「ルネサンス」と思しき文化状況を背景に、唯一北欧のデンマークを除くならば、多くはイタリアを舞台とした作品が書かれている。また、この「現代」イタリアの世界とはやや区別されたかたちで、古代ローマを扱う一連の作品が構想されている。古代ギリシアも僅かに取り上げられているが、それは少なくとも18世紀以降に想像される「古代ギリシア」とは明らかに異なるものである。 このような作品世界を基にして、「中世」と「ルネサンス」の時代区分を再考するならば以下のようになる。「ルネサンス」に関わる指標は、(1)「現代イタリアもの」においてその文化的背景と主題に、(2)「古代ローマ劇」という対象とその主題に、(3)「英国史劇」という自国の歴史を扱うその態度にも看取しうる。但し、近代に暗黙の了解とされている「ルネサンス」=「ギリシア文芸復興」というイメージは読み取りがたい。『トロイラスとクレシダ』は古代ギリシア(トロイア)を舞台とするが、ギリシア文芸の復興といった雰囲気は全くなく、かえって中世以来の「トロイア物語」の伝統を想起させ、時代的断絶を前提とする「ルネサンス」というよりは、「中世」との連続性を感じさせてしまう。この世界像における「連続」の問題こそ本研究課題の鍵を握る課題であり、次年度はこれに焦点を当てる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 高田康成: ""The Illusions of the Modern and the Pleasure of the Pre-Modern,""Poetica. 56. 121-139 (2002)
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[Publications] 高田康成: "キケロとギリシア"ギリシア世界からローマへ(彩流社). 223-251 (2001)
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[Publications] 高田康成: ""Leonardo Bruni's Civero Novus,""DESK・ヨーロッパ研究. 1. 58-63 (2002)