2002 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代アメリカ文化における「フラッパー」概念の変容
Project/Area Number |
13610556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平石 貴樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10133323)
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Keywords | アメリカ文化 / 1930年代 / フラッパー |
Research Abstract |
主としてマーガレット・ミッチェルの作品と伝記を研究することによって、1920年代の「フラッパー」の女性像の背後には、社会的進出を求める自立した女性像がひそむこと、ただし同時に、女性の自立はアメリカの場合、参政権の主張などに代表される当時の気運ばかりでなく、十九世紀以来の女性の活躍によって--いわば女性版の「開拓者精神」によって、強く支えられてきたことが確かめられた。とりわけ1930年代にトーキー化されて隆盛するハリウッド映画が、ミッチェル作品ばかりでなく、その重要な一部としてウェスタン映画を抱え込み、その中で「男まさり」の女性をヒロインとすることによって、男性主義的イデオロギーの内部ではあれ、活発で対等な女性像をほぼ必須の条件としたことが、たとえば繰り返し映画化されたウェスタン映画の代表作『ヴァージニアン』などによって確かめられた。それゆえ「フラッパー」は、この時代のアメリカの特異現象ではなく、いわばアメリカ女性の自立路線の大衆化、しかも歴史的継続性を確認しやすい大衆化として位置づけられる。結局のところ、「フラッパー」に眉をひそめた「お上品な伝統」を担ったのも、それを「フラッパー」的風俗の次元で破壊したのも、いずれも女性たちの役割を待ってのことだった、という認識は、アメリカ文化における女性の重要性を、今まで以上に印象づけることを研究者に求めねばならないだろう。
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Research Products
(1 results)