2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610568
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
好井 千代 大阪大学, 文学研究科, 助手 (90200930)
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Keywords | グローバリゼーション / アメリカ文学 / ヘンリー・ジェイムズ / コスモポリタニズム / 資本主義 / 世紀転換期 / アメリカ原住民 / 帝国主義 |
Research Abstract |
今年度(平成15年度)は、3年計画で始めた世紀転換期のグローバリゼーションとアメリカ文学をめぐる本研究の最終年度にあたり、これまでの研究を整理するとともに、更に、この3年間の研究期間に生じたグローバリゼーション研究の大きな変化、即ちグローバリゼーション現象の分析からそれを踏まえた上での「帝国」研究への批評の推移を視野に入れて本研究を改めて練り直した。具体的には、まず、昨年度学会で発表したHenry JamesのThe Golden Bowlを英語論文にまとめ、この小説はグローバリゼーションの一側面、即ち様々な国や文化や階級の境界がなし崩しになって入り交じるinternationalizationの動きが、アメリカ人やユダヤ人などのPlutocratsの金という権力によっていかに強力に押し進められてゆくかを、物語の中心人物のMaggieとAmerigoの国際結婚の顛末を通して強烈に前景化している点を明らかにし、グローバリゼーションの大きな原動力が資本主義であることを指摘した。更に、グローバリゼーション研究が帝国研究に大きく変貌しつつある最新の批評動向を視野に入れて、Henry Jamesのいま一つの大作、The Portrait of a Ladyをとりあげ、グローバリゼーションを世紀転換期の帝国主義という観点から考察した。ここでは、多民族国家という点で国家そのものがグローバルなアメリカが、対外的には国家や文化の自由と独立を称揚しながら、国内ではアメリカ原住民という他民族を強圧的に支配し抑圧しコロナイズするという二重性を兼ね備えている点を、自由を愛しながら同時に他者への支配欲も持っているこの小説の主人公Isabelの二重性を通して考察し、様々な国家や文化の共存を促進するとともに多国間、多文化間の序列化をも生むグローバリゼーションの特質にまで従来の研究を深化させ、この研究も英語論文にまとめた。
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