2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610574
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中村 裕英 広島大学, 総合科学部, 教授 (60172433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ゴーマン マイケル トマス 広島大学, 総合科学部, 外国人教師 (60325131)
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Keywords | じゃじゃ馬馴らし / 映画論 / シェイクスピア / ファロセントリズム |
Research Abstract |
ゼフィレリ監督の『じゃじゃ馬馴らし』について狩野良規は『シェイクスピア・オン・スクリーン』において「とくに男性にとっては胸のスカッとする喜劇である」と述べている。また何人かの男性のウェッブ上のコメントも好意的なものが多い。しかもウェッブ上でこの劇にコメントしている女性がほとんどいないことも考慮すると、この映画の受容は鑑賞者のジェンダーに大きく左右されていることは否定できない。日本においてこの映画のファロセントリズムを正面から批判する女性の批評については調査中である。本研究では、もっぱら一般の日本人のメンタリティが、先鋭的な批評的知識を持たない状態で、『じゃじゃ馬馴らし』をどう知覚するかに重点を置いていたために、結局、日本の消費文化自体のファロセントリズムが依然としてドミナントなものとして流通していることが確認されただけであり、さほど実りのある結果が得られなかったのは残念なことである。 これに対して欧米の『じゃじゃ馬馴らし』批評は質・量ともに充実しており、しかも現代的な批評的関心を正面から扱っている。そうした本は必ずしも特に研究者向けにかかれたものではなく、一般の人々がシェイクスピア劇を見た後で、もっと本格的にそれらの映画について知りたいという欲求に答えたものである。日本においてジェンダー論や本格的な映画研究が一般読者のレベルまで浸透していないことが、欧米のような本格的な映画研究がなされない大きな原因のひとつであろう。しかも日本においてそうした本格的なシェイクスピア映画研究を進めようとすると、欧米の映画理論だけでなく西洋特有の感受性まで学習してしまう。となると、シェイクスピア映画に対する日本人特有の感じ方がそうした研究に存在するかどうかさえ疑わしくなる。この点が当該研究のもっとも難しいところであるが、いまだにどのようにそれを理解してよいのか分からない状態である。
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Research Products
(1 results)