2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610574
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中村 裕英 広島大学, 総合科学部, 教授 (60172433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ゴーマン マイケル・トーマス 広島大学, 総合科学部, 外国人教師 (60325131)
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Keywords | ロミオとジュリエット / シェイクスピア映画 / 映画受容 |
Research Abstract |
今年度は『ロミオとジュリエット』には対照的な二つの映画版を考察した。1954年にフランコ・ゼフィレッリ監督によって制作された映画と、1996年にバズ・ラーマン監督が制作した『ロミオ+ジュリエット』である。研究の視点は日米の観客の受容に変化があるのかを考察したが、結論から言えば、それほど違いは見られなかった。理由は、この劇は欧米の観客だけでなく、日本の観客にも十分知られた劇であり、その点では両者の文化の中で神話的な作品であったためである。ただ、ラーマンの映画におけるポストモダン的要素に関しては、日本の一般の映画鑑賞者だけでなく、映画批評家についても、欧米ほど精緻な分析を試みたものはなかった。現代消費社会を特徴づける宣伝看板、現代の暴力を象徴する拳銃、警察ヘリコプターによる追跡などが、マリア像やキリスト像と同じレベルで併置されて映画のミザンセーヌの一部になっているラーマンの映画においては、パスティーシュやシュミラークルという概念の理解が不可欠である。しかし日本の映画批評ではそれは必ずしも十分なものになっていない。欧米の批評ではその点は精緻であり、その点では日本の研究者は依然として受容段階にとどまらざるを得ない。とりわけ精密な映画研究になればなるほど、そういう傾向に陥っていく。しかし、私としてはそういう状況においても、日本的な映画受容がシェイクスピア映画鑑賞においてどのような形であり得るのかを探っていくことが、本研究の最終的な課題であると感じている。
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