2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610574
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中村 裕英 広島大学, 総合科学部, 教授 (60172433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
マイケル ゴーマン 広島大学, 総合科学部, 外国人講師 (60325131)
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Keywords | ゴダール / シェイクスピア / リア王 |
Research Abstract |
本年度はゴダールの『リア王』を中心に日米の批評を比較しながら、シェイクスピア映画作品についての日米の知覚反応について考察した。ゴダールの『リア王』はシェイクスピアの『リア王』を再現した映画ではなく、むしろシェイクスピアの文化的中心性を脱構築した映画であり、批評においては映画が何を言おうとしているかというより、アクロバット的な演出法に関心が向けられている。アメリカの批評において、黒澤の『乱』への言及がしばしば見られるのは、同じくシェイクスピアの作品を素材としながら、忠実な映画化を目指さず、むしろ監督の映像芸術への姿勢を開示する点が共通しているためであろう。1987年当時のアメリカの批評は、文化の違いがもたらした二つの『リア』では、日本の『リア王』の翻案映画により好意的であった。ゴダールの『リア王』に対する観客の反応は、日米において、毀誉褒貶相半ばするものであった。欧米の批評家は、当然のこととはいえ、映画のなかで仄めかされているキリスト教的要素(イースター)の意味に敏感であり、また、ゴダール自身が故友人に対しオマージュを捧げていることにも注目していた。核抑止競争の時代においてチェルノブイリの事故に言及しているゴダールの映画を語る時に、欧米の批評がヒロシマ・ナガサキの意味を問いかけないことは、日本人の映画鑑賞者にとってはいささか欧米中心主義の映画批評に思えた。
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Research Products
(2 results)