2004 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における地方主義(Regionalism)の体系的研究
Project/Area Number |
13610575
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 久男 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30039135)
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Keywords | アメリカ文学 / American Literature / 地方主義 / Regionalism / 西部 / スタインベック / カーヴァー / J.M.コックス |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ文学を地方主義(regionalism)という観点から論じる試みの4年計画の最終年度に当たるものである。アメリカ合衆国の伝統的な地域分けである、東部、南部、中西部、西部という4区分を本研究でもプロジェクト遂行の枠組みとして採り入れたが、本年度は15年度よりのずれ込み地域である中西部の研究に時聞の三分の一ほどを割いてまとめ、残りの期聞を4年計画の仕上げとして西部に取り組んだ。『コロンビア米文学史』(1988)に「地方主義-先細り」という稿を寄せているJ.M.コックスが、「ここ[西部]は実際、私の話している文脈では地方とはいえない。西部は未来と移動性そのもの--つまりアメリカなのだ」と、地方主義という観点かち西部を扱うことの難しさを歎いている。本研究者も、そうした難しさには直面したが、ジョン・スタインベックやレイモンド・カーヴァーという西部の風土を作品に取り込んでいる作家たちを考察することにより、西部研究の中心部分は何とか遂行できた。西部にはアメリカのユートピア的な部分と、ディストピア的な部分とが,表裏一体の関係で共存しており、アメリカ社会の光と陰を強く映し出している地域である。本研究を先鋭化するために、これまで通り、F.ジェイムソンの『地政学の美学』(1995)やH.K.バーバの『文化の位置づけ』(1994)を参照した。彼らは文化唯物論的なポストコロニアリズムの視点に立って、場所の間にも歴史的に作り上げられてきたヒエラルキーが存在することを認識し、そうした文化の政治的な力学の現れ方を追求しているが、彼らの研究方法を本「地方主義の研究」に活用することたより、文学における地方主義の解釈が依拠していた審美的な要素に、いわば政治的な視線を呼び込むことで、少しは新しい解釈を提供できたと自負している。
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Research Products
(1 results)