2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610577
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉中 孝志 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30230775)
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Keywords | 17世紀 / イギリス / 文学 / 宗教 |
Research Abstract |
本研究計画遂行の初年度にあたり、17世紀英国の政治・宗教関連文献の入手に努め、その内容の考察、整理を開始した。7月には英国ダラム大学17世紀研究所で開催された国際大会に参加し、他の研究者らの成果を以降の研究方向の確認と調整に資した。情報交換のためのE-mailによるネットワーク作りの端緒をひらくことが出来ただけでなく、特に、宗教詩人Henry Vaughn研究の第一人者である、Alan Rudrum教授との意見交換は有益であった。さらにオックスフォード大学ボドリアン図書館で8月に行った資料閲覧、調査の結果として、17世紀英文学研究において新たな知見を付け加えることができた。すなわち、国際政治・宗教的脈絡が文学テクストに具体的に痕跡を残している例であって、アンドリュー・マーヴェルの詩の中に見出されるオレンジの詩的イメージが、クロムウェルによる清教徒主導の英国共和制の下での読者に如何なる連想を喚起したかを明らかにすることができた。歴史の流れの中で、オランダをカトリックの権力から開放し、プロテスタント勢力としたオラニエ家が17世紀中葉には英国王党派と血族関係を有するようになり、さらにオレンジ党にその流れが引き継がれることでオレンジが表象する政治・宗教的意味合いが変化し、それが当時の文学作品の効果に及ぼした具体例を提示することができたのである。このことは、英文学における国際的学術雑誌であるNotes and Queries誌に12月に掲載され学会の注目を集めた。
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Research Products
(1 results)