2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610577
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉中 孝志 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30230775)
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Keywords | 17世紀 / イギリス / 文学 / 宗教 / 政治 |
Research Abstract |
本研究計画遂行の最終年度にあたり、これまでに収集した文献資料の再考察と整理を開始した。さらに今年度配当分の補助費によって、特に本研究の次の段階への橋渡しとなる新刊の資料を購入した。本研究の主要目的である、1)神の摂理に関する議論が文学的、思想史的側面でどのように展開したかを整理すること、2)近代の科学的思考方法が確立するに伴って、偶然という概念が再認識されていく状況と摂理の概念が変容していく精神史との関連を明らかにすること、3)異端的セクト・カルト集団が数多く出現し、宗教思想に多様な変化形を提示することとなった時代的状況と摂理との関連を明らかにすること、4)同時代の詩の作品を分析することで政治、宗教と人間精神との相互関係について明らかにすること、を考えた時、最終的実績報告には未だ至れない。しかしながら、最終的な成果へ至る為の新たな課題を発見し得たこと、さらに、未だ体系的整理の一部分ではあるが、前記3点の主要目的を部分的に統合する形での論文が国際的学術雑誌に発表されたことをあげることができる。 前者に関しては、戦争概念と摂理との問題であって、特に清教徒革命において中世以来の所謂、聖戦論が、思想史の中での、摂理に対する懐疑傾向によって如何に影響を与え、与えられているかを文学作品の中に読み取っていくことが必要であると考えるようになった。現在、Notes & Queries誌に投稿中である‘Columbus's Egg in Milton's Paradise Lost'は、この課題解決の端緒となるはずである。また、この発展研究を遂行するため次年度の科学研究費の補助を申請中でもある。後者に関しては、17世紀の霊魂伝遺説と政治的言説との密接な関係を、ロバート・ヘリック等の文学作品とセクト集団の重要な一人であるRichard Overtonの政治的パンフレットとに見出すことができた。
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Research Products
(1 results)