2001 Fiscal Year Annual Research Report
W.B.イェイツの文化観-文化的混交の限界と可能性-
Project/Area Number |
13610587
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山崎 弘行 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50131678)
|
Keywords | 文化的混交 / W.B.イェイツ / アイルランド / ダイクティック / 共同的指示代名詞 / 遠隔的指示代名詞 / 文化の調和性 / 南北統一 |
Research Abstract |
"Yeats's Subject Positions on Irish Cultures in his Poems, with Special Reference to the Deixis'that'"という題名で、アイルランド文学研究国際学会(IASIL)(於平成13年7月31日、ダブリン市立大学)において研究発表を行った。この論文では、アイルランド独立の前後に書かれたイェイツの詩に頻出する指示代名詞"that"の機能には、指示対象の共有感を読者に喚起する共同的機能と、指示対象から語り手が距離を置いていることを示唆する遠隔的機能が同時に備わっていることを主として実証した。結論として、南北アイルランドの統一を構想する上院議員イェイヅが夢想していた「全アイルランドを代表する文化体系」が、混交的なものであることを強調した。 筆者が編著者として準備している「英文学の内なる外部-文化混交を中心に』という共著本のために、「文化混交論概説」と「イェイツとアイルランド文化の雑種性」という題名の論文を執筆した。前者の論文では、19世紀以来の否定的な文化混交論と近年の肯定的な文化混交論とを比較検討し、両者が似て非なるものであることを論証した。後者の論文では、前者の論文をふまえて、プロテスタント支配体制の文化の代表者とみなされてきたイェイツが、実は、終生、アイルランドの文化が混交であることの現実を直視し続け、この現実に対してアンビヴァラントな姿勢を示したことを実証した。結論として、イェイツは、一方で、19世紀的な否定的混交論に類似した見解を抱きながらも、他方で、アイルランドの現実に根ざした優れた詩を書くために、あるいは、平和理に南北の統一を実現して、アイルランドの真の独立を達成するために、混交の現実から調和した文化体系の創造を夢想したことを力説した。
|