2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610607
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
永瀬 春男 岡山大学, 文学部, 教授 (60135100)
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Keywords | パスカル / 計算機 |
Research Abstract |
1 論文「パスカルの計算機と数え札計算法の批判(その2)」を公刊した。この論文では、前年度の「(その1)」に続き、ジャン・フランソワ神父著『算術論』(1653年初版)のマイクロフィルム版に依拠し、数え札による乗除算のやり方を検討した。「(その2)」では、特に中間位の導入に焦点を絞り、詳細な図を示しつつ、その問題点を考察した。その結果、中間位の導入により数え札の数は減らせるものの、手順はきわめて複雑になり、習得には大きな困難が伴うことが判明した。とりわけ除算の困難さが増すため、とても万人向けの計算法とは言い難いことがわかる。数え札の複雑な手順と比較して、パスカルの計算機はすべての計算を単一の身体動作(手動ダイヤルの右回転)に一元化することで、初心者に心簡単に操作でき、原則的に誤算を除去できるという利点をもつ。こうして、パスカルによる数え札の批判(「あまりに時間がかかりすぎ、また煩雑でもある」)が、大筋において的を射ていることを確認できるのである。 2 3年間の研究成果を踏まえ、計算機に関する可能な限り遺漏のない「関連年譜」と、パスカルの時代から現代に至る発表年順の「関連書誌」を作成し、研究成果報告書に収録した(印刷製本済み)。特に書誌については、現時点までをカバーする唯一のものとして、他の研究者にも有益なはずである。 3 なお、平成14年に公刊した著書『秩序と侵犯-パスカルにおける計算機体験の意味-』に、新たに副論文(翻訳・資料篇)を添え、大阪大学に学位論文として提出、平成15年10月29日付で博士(文学)の学位を取得した。本研究の成果による学位取得であるため、付記しておく。
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Research Products
(1 results)