2001 Fiscal Year Annual Research Report
アンドレ・ジッド草稿研究-『狭き門』校訂版の作成を中心に-
Project/Area Number |
13610609
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉井 亮雄 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 助教授 (40200927)
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Keywords | アンドレ・ジッド / 狭き門 / 校訂版 / 草稿 / 生成学 |
Research Abstract |
初年度の研究作業の成果としては,生成研究全般の現状把握と,アンドレ・ジッド『狭き門』の草稿類の具体的調査との2つに大別される。 まず前者としては,生成研究の現状と問題点にかんして基本的な情報を収集した。すなわちフローベールやプルーストなど,先鋭な創作意識をもち,今日の生成研究の主要な対象となった近現代作家を中心として,ここ四半世紀をめどに代表的業績の収集に努めた。同時にそれらをテクストとして大学院ゼミで講読・討議をおこない,さらに研究会・懇談会などを定期的に主宰することで,他の研究者との情報交換を進めることができた。このような生成学全般にかんする知見は,個別的なジッド作品の分析にも理論上の確固たる基盤を与えることになろう。 また『狭き門』の草稿類にかんしては,フランスで実地調査をおこない,まずはパリ大学附属ジャック・ドゥーセ文学図書館所蔵の初期草稿やパリ国立図書館所蔵の自筆断片稿・タイプ完全稿について解読・転写を完了した。また作家の遺産相続人カトリーヌ・ジッド女史個人蔵の自筆断片稿については第一段階として写真版による解読・転写をおこなった。これら転写テクストの具体的な検討は今後の主要課題となるが,すでに初年度の閲覧・解読作業をつうじ,長期間にわたる『狭き門』生成の様態を確実に把握することができたのは大きな収穫であった。また作品発表当時の書評類の収集にも努めており,現時点で約50点を確認している。次年度に予定される関連未刊書簡の調査とあわせて,同時代の批評傾向をさぐる貴重なコーパスとなるであろう。
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Research Products
(1 results)