2001 Fiscal Year Annual Research Report
「超自然」から見たフランス・ルネサンス文学史再構築の試み-悪魔と魔女を中心に
Project/Area Number |
13610610
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
平野 隆文 青山学院大学, 文学部, 助教授 (00286220)
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Keywords | ルネサンス / フランス文学 / 悪魔 / 悪女 / 超自然 / プロテスタント / カトリック / パンフレ |
Research Abstract |
本年度は,フランスにおける文献収集とその分析に多くの時間を割いた.8月末から9月にかけて渡仏し,パリ国立図書館を中心に,ルネサンス期の宗教的・政治的パンフレや,民衆本などのコピーを集めた.その後,こうした諸文献における悪魔の役割や,超自然現象と悪魔や魔女との関わりについて,細かい分析を施していった.特に興味深い点として,16世紀後半のパンフレ作者の多くが,聖体の秘跡を巡り,プロテスタントとカトリックに分かれて激論を交わしている点である.調査の結果,実体論の立場を取るカトリック側は,プロテスタントの背後に,キリスト教の基盤を切り崩そうとする悪魔の存在を見て取り,プロテスタント側は逆に言危弁を弄するとしてカトリックの背後に悪魔を看取している点が明確に裏付けられた.その他様々な超自然現象を巡る議論を分析した結果,それが本物の奇跡("miraculum")なのか,単なる不思議な自然現象("mirabilia")なのか,あるいは悪魔の介入した偽の奇跡("singerie")なのかを判別しようとする姿勢が,ルネサンス期の知識人に顕著に見られることも明らかとなった.なお,この研究の一部は,来年度,岩波書店より刊行する予定となっている.また,今年度の研究成果の一部は,ミネルヴァ書房より刊行予定の「初めて読むフランス文学」の内に反映されている(2002年3月末刊行予定).
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Research Products
(1 results)