2003 Fiscal Year Annual Research Report
ブランデンブルク・プロイセンと少数民族形象-ドイツ現代自然詩研究-
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13610617
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Research Institution | Tohokub University |
Principal Investigator |
杉浦 謙介 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (40196712)
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Keywords | ブランデンブルク / プロイセン / ドイツ文学 / 自然詩 / フーヘル / ボブロフスキー / 少数民族 / ヴェンデン人 |
Research Abstract |
本研究は3つの局面を有している。第1は、ブランデンブルク・プロイセンの地域研究であり、第2は、この地域の少数民族研究であり、第3は、この地域の自然及び少数民族を描いた自然詩研究である。本年度も、これら3局面を密接に関連付けて、学際的な研究を行なった。 近年、ブランデンブルク・プロイセン地域におけるドイツ人と少数民族との関係も冷静に捉えなおされるようになっている。そのなかで、この地域の少数民族形象には、ドイツ人=抑圧的支配者、少数民族=被支配者という単純な二分法的図式では捉えられない錯綜した問題があることが明らかになってきた。そして、この錯綜した問題が、ブランデンブルク出身のフーヘルのヴェンデン人の形象、シンティ・ロマ(ジプシー)形象、ユダヤ・ヘブライ形象、あるいは、プロイセン出身のBobrowskiのユダヤ人形象をかたちづくっていることが分かった。また、ブランデンブルク・プロイセンの自然詩においては、少数民族形象は、自然と結びついた形象として、神秘的世界と結びついた形象として、あるいは、民族交流の形象として、その地方独自の自然観・文化・交流史を背負っていることも分かった。 一方、本年度は研究の総括を行なった。そのなかで、ドイツ自然詩を研究している国内の研究者とさまざまな意見交換を行なった。近く、神品芳夫(編著);杉浦謙介,田中謙司,内藤洋子,冨岡悦子,関口裕昭(執筆協力):『20世紀ドイツ自然詩の系譜』(みすず書房)という本が出版される。この本によって、現代ドイツ自然詩の全体像が明らかになる。現代ドイツ自然詩を広範に扱った日本で唯一の図書である。また、私は、現代ドイツの自然詩人ペーター・フーヘルの詩とその少数民族形象について、「フーヘル研究-詩集のツィクルス構造と「徴」・「ことば」・少数民族形象-」という研究論文にまとめた。これは「成果報告書」として公開する。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 杉浦謙介: "フーヘルの詩形象の認知特性-認知論的言語芸術形象論の試み-"「国際文化研究科論集」(東北大学大学院国際文化研究科). 11. 145-161 (2003)
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[Publications] 神品芳夫(編著), 杉浦謙介他4名(執筆協力): "20世紀ドイツ自然詩の系譜"みすず書房(印刷中).