2001 Fiscal Year Annual Research Report
ガリレオ・ガリレイの言語戦略の研究-2つの対話作品を中心として-
Project/Area Number |
13610646
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小林 満 京都産業大学, 外国語学部, 助教授 (50242996)
|
Keywords | ガリレオ / 対話 |
Research Abstract |
ガリレオの主要著作『プトレマイオスとコペルニクスの世界の二大体系についての対話』(通称『天文対話』)の対話形式がもっている最大の利点は、さまざまなタイプの言説をひとつの作品のなかに自然な形で持ち込むことにより、アリストテレス学派的論述、数学的論証、対話者たちによる実験、たとえ話等々、さまざまなジャンルの多様な文体が有機的につらなって議論を説得的に導き、いきいきした三者のやりとりが読者を最先端の学問領域の議論のなかに容易に取り込んでいく点にある。 特に議論のなかに時折挟み込まれる「たとえ話」は、専門家ではない一般読者を説得するのに非常に効果的な機能を果たしている。「第1日」の「森に生まれ育った者」のたとえ話や「第2日」の「ipse dixdt」に関わるいくつかのたとえ話など、人間の想像力の持っている限界や権威主義者の欺瞞などを暴き立てて、読者に明晰な思考の新しい地平を拓いてくれる。 また、身近な物を使った思考実験も一般読者に具体的なイメージを描かせて、議論を説得的なものにしている。たとえば「第1日」の「鏡を用いた実験」はすぐにでもできそうな現実性をもった仮想実験となっているのに対して、「第2日」の「船とペンを用いた実験」は完全な思考実験であるが、両者ともに読者に描かせるイメージは非常に簡潔で具体的である。 来年度はこれらの「たとえ話」や「思考実験」を含む多様な言説がどんな仕組みで議論を導いていくのかを、対話者であるサルヴィアーティ、シンプリーチョ、サグレード三者の役割分担の考察をからめながら細かく分析する予定である。
|