2002 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア諸語に於けるクレオール化と言語の起源に関する類型論的考察
Project/Area Number |
13610650
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
藤井 文男 茨城大学, 人文学部, 教授 (40181317)
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Keywords | 言語類型論 / 言語普遍論 / 統辞論 / チベット・ビルマ語派 / オーストロ・アジア語族 / クレオール / 言語変化 / 言語系統論 |
Research Abstract |
本研究の二年目に当たる今年度は、前研究(「インドシナ諸語の類型論的特質から見る、言語の普遍的発展パターン」)から引き継いだモン語口語の現地調査を昨年度に続いて実施し、来年度に予定している、『モン語口語教科書』(仮称・英文)の資料収集を最終的に完了した。今年度は同時に音声教材の収録作業も平行して行ない、この方面でも出版のための準備が整った(科研費の成果刊行助成金を申請中)。 理論的な側面では、旧来から手掛けていた、近隣地域で行われるカレン語との対照研究を可能とする、類型論的特質の概要がモン語に於いても明らかになった点が挙げられる。もちろんのことエリア的な関係もあってだが、両言語は細部に亙って高い類似性を示す。ただ、概略的にいえば、モン語の方がDiscourse Function関し、カレン語に比してより高い統辞上の柔軟性を持つように思われる。この事実自体が言語のクレオール化と如何なる関係にあるのか、理論的に即断はできないが、特に語順のように既存の表現要素に対するオペレーションは、新たな表現手段が生み出される前には"手軽"なカテゴリーとして機能し得ることは十分に考えられ、すくなくとも文法的・類型論的な言語変化に際してのtrigger的な存在として捉えることはできよう。こうした特質を中心に、来年度以降はモン語の文法構造について類型論的観点からの研究成果を順次、公表していくつもりである。 モン語に関する実地調査が一応の決着を見たので、来年度からは主にムンダ語を中心とした実地調査に主軸を移し、オーストロ・アジア系諸語の間に横たわる類型論的差異に注目した研究を展開していきたい。
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