2004 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア諸語に於けるクレオール化と言語の起源に関する類型論的考察
Project/Area Number |
13610650
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
藤井 文男 茨城大学, 人文学部, 教授 (40181317)
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Keywords | 言語類型論 / 言語普遍論 / Arial Linguistics / 言語接触 / クレオール化 / 統辞論 / 言語系統論 / モン・クメール語族 |
Research Abstract |
本研究は、平成6年から12年まで、科研費の支援によって実施された研究の"続編"を成し、先行二研究に於いて確立された、フィールドワーク的手法による口語データの統辞論的分析から当該言語の類型を特定し、最終的にはクレオール化の痕跡を探るための作業を、前々研究で対象としたカレン語以外のインドシナ及び周辺の諸語にも援用しようと実施されたものである。 この地域に於ける言語の系統と統辞体系の通時変化を比較言語学的に探ろうとする試みは、中国語を除く歴史的言語の欠如と、統辞体系のareal化に阻まれ、徒労に終わることを運命づけられている。こうした背景が、この地域で行なわれる諸言語を言語学誌的研究対象に矮小化させ、一般言語学的議論の場に登場させることを長期に亙って阻害し続けた事実は否めまい。この点、先行二研究を含め、オーソドックスではあるが、あまり馴染みのない少数民族の言語の統辞構造を極めて多元的に解明しようとした本研究は、一次資料の収集だけに関しても言語学の領域を越えて多方面に有用な手段を提供できるものとなった。学術的情報不足も手伝い、この地域の言語の現代語にクレオール化の痕跡を発見するのはそう簡単な作業ではないが、areal化自体もある種のクレオール化と見なすこともでき、もう少し対象を広げることでそのメカニズムを特定することは可能と思われる。 その際、極めて重要となるのが、同系と目されながら、基本語順など類型論的パラメータが極端に異なる、例えばビルマ語群に対するカレン語のような位置づけの言語の存在である。本研究に於いては、他のモン・クメール語群のムンダ語がそうした位置を占めることが浮き彫りとなった。しかも、カレンがSVO、ムンダがSOVと両極なのが極めて暗示的だ。その意味で、一般にはクレオール化に矛盾するとされるSOVのムンダ語は、次研究では中核に据えることになろう。
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Research Products
(6 results)