2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本語と中国語のとりたて表現の数量的側面に関する認知的対照研究
Project/Area Number |
13610658
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
定延 利之 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (50235305)
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Keywords | 認知 / とりたて表現 / 体験と知識 / デキゴト / 日中対照 / りきみ / 声質 / 言語 |
Research Abstract |
帰属という杜会心理学の概念を援用することによって、日本語と中国語のとりたて表現(「ばかり」と"jing")の共通点と相違点を説明でき、さらに、それ以外の日中の言語差(期間表現「ずっと」と"yizhi"、頻度表現「ときどき」と"ouer")も同時に説明できるような、汎用性の高い仮説を構築した。この仮説の中核は、知識と体験という、言語情報の区別にあり、この区別は、人間と環境とのインタラクションが話し手の中で活性化されるパタン(探索と体感)と程度に関係している。 次に、この言語情報の区別をデキゴトモデルに取り込むことによって、この仮説がこれまで問題視されてきたり、見過ごされてきた、日本語のさまざまな言語現象(いわゆる過去表現「た」のムード的用法、存在場所表現「に」と「で」の使い分け、さらに、とりたて表現「だけ」「しか」「ばかり」の細かな使い分け)にも利用できるということを示した。 さらに、最近ではメディア、構造、コミュニカティヴ・ストラテジー、内容の4面にわたって考察されている、話し言葉と書き言葉という言語位相のレベルにおいても、この仮説を適用することによって新たに説明の道が開けてくる現象が存在することを、オノマトペや引用表現を用いて例証した。 また、音声会話における声質の分析にも同様の仮説が適用できることを示した。さらに、知識と体験の区別が現実のコミュニケーションにおいては表現類型上の区別ではなく、より根元的な行動類型レベル上の区別として機能していることを示した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 定延 利之: "インタラクションの文法、帰属の文法"中国語学(日本中国語学会学会誌). 第250号. 250-263 (2003)
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[Publications] 定延 利之: "体験と知識-コミュニカティヴ・ストラテジー-"國文學-解釈と教材の研究-(學燈社). 第48巻・第12号. 54-94 (2003)
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[Publications] Toshiyuki SADANOBU: "Event model without time shift"Proceedings of the 10th International Conference of EAJS. (未定).
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[Publications] 定延 利之: "ムードの「た」の過去性"国際文化学研究. 第21号(未定). (2004)
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[Publications] Toshiyuki SADANOBU: "A natural history of Japanese pressed voice"Journal of the Phonetic Society of Japan(音声研究:日本音声学会学会誌). 第8巻・第1号(未定). (2004)
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[Publications] 定延 利之: "モノの存在場所を表す「で」"日本語の分析と言語類型(くろしお出版). (未定). (2004)
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[Publications] 野田尚史ほか全14名: "日本語のとりたて-現代語と歴史的変化・地理的変異"くろしお出版. 281 (2003)