2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610666
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西山 佑司 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (90051747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊本 千明 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (10153355)
小屋 逸樹 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (80234904)
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Keywords | コピュラ文 / 指示 / トートロジー / 指定文 / 変項名詞句 / 属性名詞句 / 潜伏疑問文 / 飽和名詞句 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に続き、以下の諸問題を検討することによって、コピュラ構文のもつ多様な意味構造と情報構造を明らかにした。 1 コピュラ文における指定文・措定文の区別という観点から、「象は鼻が長い」およびそれに関連するいくつかの構文について考察した。まず、「象は鼻が長い」型の構文は、文全体としては措定文ではあり、主題をもつ文(有題文)であるが、述語に指定文を内在しているとみなすか否かに応じて二通りの読みが可能であり、暖昧であることを明らかにした。そして、その暖味性を無視したり、この構文を「象の鼻が長い」から派生しようとしてきた従来のアプローチは不備であることを指摘した。とくに「象」と「鼻」の関係についての従来の説を批判的に検討した。(西山2002) 2 コピュラ文「魚は鯛がいい」のような文は、「象は鼻が長い」や「辞書は新しいのがいい」などの構文と似ているだけに混同されやすい。「象は鼻が長い」構文が「象」を主題とする有題文であるのと同様に、「魚は鯛がいい」構文も「魚」を主題とする有題文であるとする見解は広く受けいれられている。本研究では、このような従来の見解を批判し、「魚は鯛がいい」構文は、統語論的にも意味論的にも「象は鼻が長い」構文とまったく異なること、この構文は指定文であり、有題文ではないことを論証した。この議論を通して、「AはBがC」という構文のもつ意味の多様性と有題文との関係について考察した。(西山2003) 3 「戦争は戦争だ」"Women are women."のようなトートロジーの解釈については、これまで、使用コンテクストとの関連でGrice流の会話含意(conversational implicature)による説明がなされてきた。しかし本研究では、トートロジーはコピュラ文であることに着目し、コピュラ文の様々な意味と用法の観点から、トートロジーに有意義な解釈を与える新しいメカニズムを追求した。(小屋2002)
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 西山 佑司: "「魚は鯛がいい」構文の意味解釈"慶應義塾大学言語文化研究所紀要. 34号. 65-96 (2002)
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[Publications] 小屋 逸樹: "トートロジーと両義性"慶應義塾大学言語文化研究所紀要. 34号. 1-26 (2002)
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[Publications] 西山 佑司: "日本語名詞句の意味論と語用論"ひつじ書房. 360 (2003)