2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610683
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 宗子 千葉大学, 教育学部, 助教授 (40162490)
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Keywords | 児童文学 / 翻訳 / 再話 / ジェンダー |
Research Abstract |
1 従来から研究を継続している『フランダースの犬』に関しては、今回とくに重要な脇役であるアロアの<少女>性について、映像化された作品とさらにその派生的再話に注目した。新たな読み替えが、実は聖性を帯びたイメージの枠をそこに作ってしまう例が見られること、重層化されるなかでむしろ原作に近くなる場合もあったり、いったん閉じ込められたイメージが再度解放されることもあることなどの発見があった。 2(1)大阪国際児童文学館での資料収集では、とくに、すでに知られている再話(菊池幽芳「家なき児」)の、少年むけと少女むけ雑誌への同一掲載という例に着目した。すでに「名作」と認知されたものが、男女を問わぬ読者すべてに、「常識」の基準として提供されており、理想とされる「子ども」像が、とくに大衆的な雑誌の場などで、意外なほどに、ジェンダーの枠を越えていた実態の一端が明らかになった。 (2)上記の場合、挿絵については二誌それぞれに、別の画家が担当している。これは、視覚イメージと関わる児童文化のジェンダー問題を考える手がかりとなりうるだろう。 3(1)グリムやアンデルセンなどの初期翻訳については資料を入手し、検討を続けている。どのような話題が好まれていったか、主人公の性別等とそうした紹介がいかに関わるかを、他の同時代の翻訳・再話と関わらせて慎重に検討を続けていきたい。 (2)女性の翻訳家たちのなかでは、若松賤子の文体や母親イメージの造型に着目している。とくに『小公子』がのちに、子ども向け雑誌のみならず婦人雑誌に再話されている例から、「子ども」と「女性」の読者としての位置関係を、検討中である。
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Research Products
(2 results)