Research Abstract |
今年度は、収書計画の遂行継続は勿論として,とりまとめの年であったので,フランス民法典という一つの作品の成立の背景,および,成立後のこの200年の推移の総合的考察を中心として,数回の研究会を行うとともに,シンポジウムの組織および出版の準備を行った。フランス側研究協力者との関係でも,2004年3月のパリでの200年記念行事およびその後のいくつかの国際会議の機会をとらえて,内容的な議論および研究の打ち合わせを行った。 民法典の成立の背景に関しては,大革命固有の脈絡もさることながら,その前史として,15世紀半ば以降の慣習法の成文化の結果として,諸地方の慣習法の比較研究の中から,フランス固有の共通慣習法の存在の意識化,および,そこからローマ法に対する関係での独自の「フランス法」の記述・体系化と統一法典形成の試みとが,ローマ法の「法学提要」にならう形でなされてきたプロセスを興味深く辿ることができた。 法典成立以後の推移に関しては,民法典中の人事・家族法部分においては,20世紀後半の大改革および最近の再改革を通じて大大的な現代化が行われたのに対して,財産法・債権法の分野では,民法典の内容は原始規定からあまり変化がないままで,判例法および特別法による進化が著しいという好対照が見られる。 研究成果の発表に関しては,まず,2004年6月の比較法学会総会において,比較法学会および日仏法学会共催のミニ・シンポジウム「フランス民法典の200年」の機会に,研究協力者の一部および他の協力者の参加を得て,総論・家族・財産・契約の4つのテーマに関して報告・討論を行った。その概要は,比較法学会の機関紙『比較法研究』66号(2004)(近刊予定)に掲載される。 単行本『フランス民法典の200年』の編集も最終段階に入っており,半数程度の原稿は既に完成しているが,法科大学院の発足に伴う繁忙の影響から他の原稿が遅れている状況にある。しかし,2005年度中の刊行をめざして鋭意努力しているところである。
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